帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

腹上死して生まれ変わってタイ人に114話

twanwan.hatenablog.com

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第114話 タイに帰任


2010年5月。
本社技術部から俺が強制的にインドに赴任させた北川の頑張りで、インド工場の生産は軌道に乗り、製品の品質についてもタイに負けないレベルまで高めることが出来た。
 
工場内の従業員用食堂で北川と一緒に昼ご飯を食べているときに、そんな北川の頑張りに対するご褒美を思いついた俺は日本本社の酒井社長の秘書さんに電話をかけた。
 
「もしもし? 秘書さん? 
インドのアットです。酒井社長の携帯電話に今から直接電話して良いですか?
ありがとうございます。 
それでは今からかけます。」
 
北川は急に日本本社の社長秘書さんに電話をかけた俺に驚いて横で飯を吹き出す。
 
むせている北川を気にせず酒井社長の携帯電話にかけた。
 
 
「お疲れ様です!アットです。 ご無沙汰しております。
 
インド工場ですか? かなりマシになりましたよ! 
 
それも技術部から移籍して俺の部下になった北川の頑張りのおかげです!

 
それで今回お電話させていただいたのはお願いがあるのです!
 
その頑張った北川を直接電話で褒めていただきたいのですが良いですか?
 
ありがとうございます! すぐ代わります。」
 
 
携帯電話を北川に渡す。
 

「もしもし? 酒井だ。 君が北川君か。
 
村上からも君のことは聞いてる。良くやった。
 
これからもアットを助けてやってくれ。」


北川は直立不動で酒井社長と少しだけ会話をした。
受話器の向こうに向かって深々と何度もお辞儀をしていた。

 

「アットさん。どうして急に無茶振りするんですか! 心臓が飛び出そうなほど緊張しましたよ!」

 

「北川。どこにいても酒井社長や村上さんもお前の頑張りをきちんと把握してるんだからな。」

 

北川はみっともなく泣き出してしまった。

偉い人に褒められたらうれしい。
それは日本人もインド人も同じだ。



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2011年4月。
2年3か月のインド勤務を終えようやくタイに戻ることが決定した。
 
 
タイに戻る前に日本の本社に立ち寄って異動の挨拶と、あるお願いをするために村上さんに会いに行った。
 
 
村上さんはこの4月から専務取締役製造本部長に昇格しているので今は本社ビルのあの専務室にいる。
 
 
「村上専務。突然ですがタイのエンジン式発電機を買い占めます。1億バーツほどの購入を承認してください。」
 
 
「1億バーツ! 3億円か? 何をするかは聞かんが勝算はあるのか?」
 
 
「とてつもないお金の匂いがします。」
 
 
「その1億バーツを俺が承認しなかったらお前はどうするんだ?」
 
 
「自己資金をつぎ込んで買えるだけ買います。」
 
 
「それでどうするんだ?」
 
 
「必要なお客様に売るだけです。当然業務で必要な時に使います。ただ個人で買える範囲だと儲けも少ないです。」
 
 
「・・・そうか。お前に任せる。3億円でタイの発電機を買い占めろ。」
 
 
 

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発電機