腹上死して生まれ変わってタイ人に117話
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第117話 洪水復旧作業
2011年11月。
アユタヤ方面では水位が下がり、復旧作業が本格化した。
生産をすぐにでも再開したい工場は費用がいくらかかっても良いから復旧作業を急ぎたいという依頼が殺到する。
俺は適正金額の3倍の見積もりを出すように指示しているが、どの工場も金額交渉することなく早期の対応を望まれる。
復旧作業にかかった費用は災害保険で補填されることが保険会社から知らされて、各企業は太っ腹になっている。
受注している機械生産のための最小限の人員だけ残して日本人も含めた多くのスタッフを復旧作業に向かわせた。
この頃の同業他社は下請け会社や作業員の確保に苦心しているが、俺が200人近い労働者を直接雇用して確保しているためお客様からの依頼を断ることなく対応できている。
生産再開のための大型発電機も数台確保出来ているのですぐに納入出来てお客様に感謝された。
もう1億バーツ分ほど多く発電機を買っておけば良かったと後悔するが、洪水前の「こんなに発電機を購入して馬鹿じゃないか?」というみんなからのプレッシャーを考えるとちょうど良かったのかもしれない。
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2012年3月。
洪水の復旧作業は収束しつつある頃。
日本本社の酒井社長から直接俺の携帯電話に着信があった。
「アット! 最近お得意様の社長と会うたびにタイで世話になっていると感謝されるが大丈夫か?」
「大丈夫かと言いますと?」
「発電機をタダでもらったとか、品薄で入手困難なミネラルウォーターとインスタントラーメンを大量にタダでもらったとか。
お客様を大事にするのはありがたいが
「大丈夫です。普段の3倍の値段で吹っ掛けてますから。
取り急ぎ早急に集計して報告します。」
さすがに少し心配になってこの半年の利益を集計したところ、【えらいこと】になっていた。
過去5年間の利益の合計を超える金額の利益額だった。
最初の発電機の購入やメンテナンススタッフと臨時雇いの作業員達に給料の3倍以上の残業代を支払ってもこの利益!!!。
当然俺が身銭を切って購入したミネラルウォーターとインスタントラーメンやボート2隻を購入金額の1.5倍で支払ってもらっていても。
こんなに利益が出るなら俺の立替分をもっと吹っ掛けても良かったと後悔している。
臨時ボーナスを頑張ったスタッフに出そうと思う。