帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

腹上死して生まれ変わってタイ人に73話

機械製造会社の駐在員ユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。

死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。
コンケン大学を卒業したアットは前世で勤務していた会社に入社する。

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第73話 ふたたび異動
 
 
 

「アット! その作業はもういいからここの私物を全部片づけて営業部に行け」
 
朝から工場で図面を見ながら部品発注の準備をしていると上司のチャイラットさんに、いきなり異動を命じられた。
 
タイ人スタッフには辞令は無い。
生産部長がタイ人マネージャーに相談しつつが、異動が決まるが昨晩の会議で決めて翌朝本人に告げられるという簡単なものだ。
 
 
 
2002年4月。
営業部に異動となった俺はこれまで設計で2年、機械グループの工場の現場で2年。
 
今度は前世でも経験したことのない営業部勤務に不安になる。
前世で営業部勤務どころか、計装グループリーダーであったころも客先の工場にすら出向くことは稀であった。
 
客の前に出ることが嫌いだった俺は陰口を言われながらも客先の工場では打合せやクレーム対応など営業や部下に任せてきたのにどうして今更営業部に転勤なのか。
 
まあタイ人になってしまった今では恥も外聞も無いし、営業でも何でもやってみようか。
 
 
 
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ここでウチの会社の組織構成についてさらっと解説しておく。

社長の下に「部」とされている部署は3つ。

生産部、総務経理部、営業部。

生産部の下に
機械グループ、計装グループ、設計課、購買課、メンテナンス課

総務経理部の下に
総務課、経理課、人事課

営業部には下部組織にあたる「課」は無い。




今回転属になった営業部は「部」として組織構成上の位置づけでは生産部と肩を並べるが、営業部の所属人員は少ない。
日本にはそれなりの営業部員はいるが、国内ではそこそこのシェア・知名度・技術力を誇る【TKテクニカ】では飛び込み営業などしない。
 
営業手法は基本的に有力顧客の生産計画策定にまで関わっての「仕込み営業」もしくは客先から声がかかる「待ちの営業」だ。
従って純粋な営業職は多くは無い。
タイでは日本で付き合いのある会社のタイ工場がほとんどなのでより顕著であった。
 

そんな「弱小」営業部には日本人は営業部長の宮川部長(45)と高瀬さん(32)の二人だけ。
タイ人は純粋な営業職として女性のノイナーさん(30)と営業事務が2人の計5名だけであった。


新たに配属した俺は高瀬さんのサポート役としてしばらく彼に付くことになった。



俺の上司となった高瀬さんは単身でタイに赴任して2年。
会社が指定したシーロムコンドミニアムには住まず、自分で探したスクンビットのナナプラザの近くのコンドミニアムに住んでいる。

彼曰く、ナナプラザに寄らないと1日が終わらないらしい。
営業職なのでお客様の接待で食事やカラオケスナックに同行することが多い彼であるが、接待や残業でどんなに帰りが遅くなっても必ずナナプラザに寄ってから帰るそうだ。


2002年当時は今のような警察や陸軍による規制も無く、店によっては明け方まで営業していることもあった。
さすがに毎日ナナプラザのゴーゴー嬢を自宅にお持ち帰りしている訳では無いと思うが・・・彼の運転手が言うにはかなりの頻度でお持ち帰りもしているらしい。

彼は他の日本人から【初めてバンコクに来た日本人が最初の1か月目に高頻度で風俗に通うような状態が2年続いている男】と呼ばれている。
 
 
 
営業職としての俺の仕事は高瀬さんのように夜の接待は無い。
彼に同行してお客様に訪問し、タイ人マネージャーとの打ち合わせに参加したりタイ人スタッフからのクレームやリクエストに対応。
その他に、客先に図面や請求書を持っていくなどがであった。


俺は営業部の車を運転して請求書を届けるべくサムットプラカーンにあるお客様の工場に向かった。
 

そこで俺は天使のような女性と出会った。