帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

腹上死して生まれ変わってタイ人に72話

機械製造会社の駐在員ユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。

死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。
コンケン大学を卒業したアットは前世で勤務していた会社に入社する。

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第72話 日本研修 3
 
 
 

俺は日本に研修に行ってきたタイ人スタッフ7名がタイ語で書いて提出した研修レポートを村上部長の指示で日本語に翻訳を行っている。


機械グループのオネークさんに続いて二人目のレポートを翻訳する。


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ジュタマート  経理グループ 


タイの工場には女性の作業員は多いが、日本の工場には女性はいなかった。
しかしお昼休みには食堂で何人か女性がいたので一緒に食べた。

日本の女性はとても優しく親切にしてくれた。
私は仲良くなった日本人女性にタイ語を教えてあげた。

最初は全く出来なかったが最終日には挨拶や自己紹介などのタイ語が話せるようになって良かった。


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「日本に研修に行ったならお前が日本語を覚えろよ!!」
と突っ込みたくなった。

ちなみにこいつは経理グループの30代の女性で大学を卒業している。
 
大卒の従業員が会社の金で海外研修に行って一番の成果がタイ語を教えたこと。この翻訳されたレポートを見た村上部長の落胆が目に浮かぶ。
 
 
結局7人分のレポートを訳したが、技術的な内容に踏み込んだのはパットさんただ一人。

しかしそのパットさんも製品精度が良いとか品質が良いとか書いてあるだけ。
 
加工精度を上げる工夫とかタイでの検査作業の違いとか書けよ!

日本に研修したことで何を感じて、タイに戻ってからどんな行動をしたいのか

そんなレポートを上層部は期待しているのに・・・まともなレポートは全く無かった。

今回はタイ人マネージャーが選んだ社内で【居なくなっても業務に支障の無い】メンバーではあった。人選の時点でレポートに期待は出来ないことが予想できたと思う。
それにしてもタイ人にレポートを書かせるなら渡すレポート用紙に
 

『1.あなたは日本の生産現場で何を感じましたか?』
『2.日本であなたが見習うべきと思ったのは何ですか?』
『3.タイに戻って活かせることは何ですか?』
*注意 このレポートの内容は人事考課に反映されます

などと書くべきだろう。

俺は7名のフォローも含めて次回の改善案を作成した。
 

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「やはりアット君が翻訳しても同じ内容だったか。」


翌朝、翻訳したレポートを村上部長に渡すと落胆していた。
実は新しいタイ人日本語通訳者の女性に翻訳させたのだが、内容があまりにも稚拙だったので村上部長は翻訳者である彼女の能力を疑って俺に再度翻訳を依頼したのだ。

落胆する村上部長に、俺が作成した改善案を渡すが、ちらっと見ただけで返された。

「君は心配しなくていいよ。」



村上部長を落胆させるレポートを書いた7名は特に何を言われることも無かったようだ。

タイ人を日本研修に送るには優秀なメンバーを選び、カリキュラムを日本と事前に調整して、研修前に具体的な課題を与えないと意味が無い。

最低限の英語を理解するメンバーでなければならない。


村上部長のさっきの雰囲気だと来年の日本研修は実施されないだろう。