腹上死して生まれ変わってタイ人に85話
機械製造会社の駐在員ユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。
死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。
コンケン大学を卒業したアットは前世で勤務していた会社に入社する。
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第85話 日本へ
「ごめんねアット君 怒ってる?」
ヌーイの呼び出しに対して数時間待たせたた上に行かなかった俺に対して怒っているかと思ったヌーイは何故か電話で謝ってきた。
自分と相手の力関係を瞬時に見抜いて態度を変える能力は本当に凄いと思う。
あれだけ待たされて謝るヌーイのメンタルも強い。
今後も俺から金を引き出すために態度を軟化させてきたヌーイ。
うまくいけばもう1回ぐらいセックスをさせてもらえそうな期待が芽生えた。
いやダメだ。
これ以上関わるとロクなことにならない。
「怒ってないよ。昨日はごめんね。今度は絶対に行くからね」
この電話の後、ヌーイからの着信は無くなった。
俺が今後は一切ヌーイの要求に応じないという気持ちを読んだのだろうか。
本当に人の心を読むエスパーのような女だ。
恐ろしい。
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2003年4月。
期間未定の長期研修のため日本に出発する日となった。
そういえば前世の俺は29歳だった2003年の4月にタイに赴任して来た。
逆に今の俺は同じタイミングで日本に行く。
もしかすると、今のこの世界でも存在する【日本人の俺】が入れ違いに日本から赴任してきているのか?
そんな【日本人の俺】のタイ赴任と反発するように俺は日本に行くことになったのだろうか?
前世の俺が10年以上ズルズルとタイに居続けたように、今の俺は10年以上ズルズルと日本で働き続けることになるのか?
少し不安になりながら日本行きの飛行機に乗り込んだ。
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「クソ暑い国だなぁ 勘弁してくれよ~」
アットがドンムアン空港から出発した日。
初めての海外勤務に不安と期待とともにドンムアン空港に到着した男がいた。
長身で坊ちゃん刈りの日本人男性。
29歳でタイに赴任してきたユウイチであった。
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日本に到着したアットは見慣れた本社ビルに到着した。
1階の受付の横には俺のアテンド担当と思われる男性社員が待っていたので30°のお辞儀とともに自己紹介をした。
「タイから研修に参りましたアッタポンと申します。私は大分に留学した経験があるので日本語は読み書きもすべて大丈夫ですので日本語で遠慮なくご指導よろしくお願いいたします。」
「君が噂のアット君だね。村上さんから聞いてるよ日本人より日本人らしいタイ人が居るって。」
俺の日本研修が始まった。