腹上死して生まれ変わってタイ人に92話
機械製造会社の駐在員ユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。
死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。
コンケン大学を卒業したアットは前世で勤務していた会社のタイ法人に入社するもいつの間にか日本本社採用となっていた。
第1話はこちらから
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第92話 技術部員アット
2004年6月。
この4月から東京の本社に転勤になった。
転勤先は本社の技術部。
俺みたいな前世では1.5流の私立大学卒、今はコンケン大学卒のような一般人が所属するような部署ではない。
まあコンケン大学はタイでは旧帝大クラス扱いではあるが、俺は付属中学からの入学だから場違い感を感じてしまう。
こんな俺が技術部に来たのも、今の技術部長がタイで製造部長としてお世話になった村上部長だからだと思う。
村上さんが出張するときに俺はよく同行させられるので気軽なアシスタントとして指名されたのだろう。
出張先での技術的問題に対して俺なんかに意見を求められても困るが、村上さんはよく俺の意見を聞きたがる。
電気的な事象だとかプログラム由来のトラブルなどの計装的な問題だと村上さんより詳しいと思うが。
これまでの俺の経験で言えるのが、機械工学科出身の機械エンジニアは問題発生原因に心当たりの無い問題が発生すると計装のせいにしたがる。
俺のように両方の経験があれば公平と言うか偏見無く見れるので村上部長が気づかない問題に気づくこともある。
たまにだが。
たまに俺の指摘が合っているだけで、村上部長は俺を買いかぶっていると思う。
村上部長が俺に意見を求めるときに良く言うのが
「君の嗅覚ではどう感じた?」
である。
嗅覚って俺は犬か?
匂いで技術的な問題が解決出来たら技術者いらんわ!
俺は匂いで技術的な解決方法は分からないが未来は知っている。
先日俺が未然に防いだ光電子の不具合に続くトラブル。
当時、呪われた千葉工場と言われるほど連続して発生した【3大トラブル】の2つ目がそろそろ発生する頃だ。
俺を本社採用にしてくれた酒井工場長が前世で辞職に追い込まれる原因となった連続して発生した【3大トラブル】。
恩義のある酒井工場長のために次も防いでやろう。
夕方の技術部内でのミーティングで原因を究明中の案件に対して村上部長が俺の意見を求めてくる。
「アットの嗅覚ではどう感じたのか?」
しまった!千葉工場の事を考えていたので話を全然聞いていなかった!
ここで適当なことを言ってもまずいので千葉工場で発生するであろう問題について意見しておく。
「村上部長! 千葉工場でトラブルの匂いがします!」
聞かれた内容と全く異なる唐突な俺の発言に、ミーティングに参加している技術部員たちは唖然とする。
質問した村上部長も驚いて固まっていたが、数秒後に立ち上がって俺に命令した。
「よし!全てお前に任せる。 お前の気がすむまで千葉に行って対応しろ!
酒井さんには俺から言っといてやる。」