帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

腹上死して生まれ変わってタイ人に116話

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第116話 洪水襲来
 


2011年7月末。
例年に比べて雨量が多く被害が拡大しているタイ北部での洪水のニュース。
毎年のことなので、みんな他人事のように気にしていなかった。
 
アユタヤ北部の工業団地であるサハラッタナ工業団地で道路が冠水しはじめてたと思うと数時間のうちに水位が道路から6mにも達してほとんどの工場が水没した。

工場の建屋も半分近くが茶色い濁水の中に水没し、人間が避難するのがやっとだった。
避難していた高台も周囲が水没し、身動きが取れなくなる。


水没する地域はアユタヤ全域に広がり、日系企業の多いロジャナ工業団地も水没した。



洪水の被害が始まって2週間経過しても水位は下がらない。
1か月経過しても2m以下に水位が下がらないことに焦った客先から依頼が来るようになった。

水没した工場で使えるものを出来るだけ回収したい。
回収できた機械や設備で使えるものは使用できる状態にしてもらいたい。
 

お客様の依頼に対応するため、俺が買った2隻の船に加えて急遽購入した船外機付きのボート2隻に発電機を乗せてメンテナンスチームが出動する。


北部や中部の一部の地域の災害だと思っていたバンコク近郊の工場も徐々に南下する洪水被害に危機を感じてきた。
今のうちに移動可能な生産機械の避難の依頼や水没対策の依頼が殺到しはじめた。


この頃になってようやく俺の先見を理解したスタッフ達が従順になって俺の指示に従ってくれるようになった。


「メンテナンスチームはスタッフ1人当たり10人の臨時作業員を付けて行動しろ。各自はどの工場に何日対応したか記録しておけ!」


「製造部長! お客様から発電機を売ってほしいと依頼されたのですが売値はどうしましょうか!」


「買った値段の3倍・・・・・いや 無料で差し上げろ。ミネラルウォーターとインスタントラーメンも自分達だけでなくお客様の従業員にも景気よく配れ!」

 

タイで販売している発電機を大量に買い占めた結果、お客様としては発電機の手配が難しくなっているはずだ。
小型の5KVAや中型の20KVAの発電機は在庫が十分にあるのでお得意様には気前良く差し上げよう。




「メンテナンスチームの残業手当は出勤簿を提出しなくても毎日10時間つけるから頑張ってくれ!
休日出勤手当は全部出すから!」


洪水の被害地域が南下するにつれて忙しくなる。
しかし本当に忙しくなるのは水が引いてからだ。