帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

腹上死して生まれ変わってタイ人に88話

機械製造会社の駐在員ユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。

死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。
コンケン大学を卒業したアットは前世で勤務していた会社に入社する。

第1話はこちらから
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第88話 日本研修3



2003年5月。
千葉の研修所で鬼のコンサル社員によるシゴキ研修が終了すると新入社員達は職種に関わらず毎年全員が千葉工場に3か月間配属される。

俺も新入社員達と同じく千葉工場に配属された。


新入社員は研修が終わるとまず3か月は主要工場の千葉工場、その後3か月は敦賀工場、最後の3か月間は本社勤務となる。
その9か月が終わってから初めて本来の配属先に配置される。


その9か月間、新入社員は妻帯者といえども強制的に入寮させられ共同生活を強いられる。

昼間それぞれの職種ごとに勤務する部署は異なるが、夜の8時には必ず寮に戻って新入社員だけのミーティングに参加しなければならないというルールがあった。

ミーティングには定期的に課題が与えられ、その課題について話し合う。




最初の課題は【新入社員歓迎会で何をするか】


市原寮に着いたその夜から始まったミーティング。
議題は次の月曜日に行われる歓迎会で何をするか?

【何をするか】という課題だが、要は新入生の出し物を話し合って考えろという事だ。



大学で応援団に所属していたヤツの提案で女装してチアリーダーによるダンスという出し物に決まった。

何故女装しなければならないのか分からないが、女装すればそれなりにウケが狙える定番といえば定番の出し物だと思う。

ちなみに前世は組体操だったな。



女子の新入社員も2名いたが、学ランを着て応援団の真似事をしてもらうことになった。

昼間は工場の会議室で座学や講義を行い、寮に戻ってから歓迎会の出し物の練習という日が3日ほど続いた。



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今日の俺は新人研修の一環として行われている工場内見学で、完成品検査場に来ている。

そこは今年一番の大型機械が納品直前のようで、緊張感が漂う中で出荷前のチェックが行われていた。

お得意様の大手の電機メーカー向けで今年で一番大きな規模の出荷ということだ。さすがにでかいな。



この大型機械の納品先は光電子。 

光電子といえば前世で千葉工場から納品した大型機械にありえない不具合が出てお客様の生産に迷惑をかけ、訴訟されるなどの大問題になった取引先だ。


そういえばちょうど問題が発生したのは俺が海外に出た直後だったよな。


千葉工場にいた同期に聞いた話では計装グループのミスで大問題になったのでそれ以降は計装のスタッフは肩身が狭い思いをしたらしい。



不具合の内容は確か同じ光電子向けに出荷した古い機械用のソフトウエアを間違って新しい機械にインストールしたのが原因だ。

普通に考えてもあり得ないミス。

しかし社内検査する検査員は古い機械用の仕様書を使って確認したためミスに気付かなかった。



結局、機械の起動画面の右下に表示される著作権表示の年度表示が去年の【2002年】になっていることを不審に思ったお客様の指摘により原因が分かった。

「お前らは古いソフトを使いまわしなのにプログラム費用を請求するのか!」 

などとお客様に言われ、機械の代金も回収できない上に損害賠償を求められたらしい。



もしかしてこの機械が問題の機械だったりして。 
出荷検査中の機械の起動画面が現れたので画面の右下の著作権表示を見てみると・・・・



2002年  だった。



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