腹上死して生まれ変わってタイ人に89話
機械製造会社の駐在員ユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。
死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。
コンケン大学を卒業したアットは前世で勤務していた会社に入社する。
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第89話 日本研修4
2003年5月。
新入社員研修が終わって配属された千葉工場で出荷前の機械に「後に大問題になる」不具合に気づいたアットはすぐに報告する事にした。
機械グループの課長さんが近くにいたので勇気を出して報告する。
「この機械の起動画面を見たのですが、2002年と表示がありました。今年納品の機械は2003と表示すべきですよね?
ソフト作成時の入力ミスなら良いのですが、間違って古いソフトをインストールした可能性も否定できないのですみませんが計装グループに確認してもらえませんか?」
「そんな馬鹿なことは無いと思うよ。研修生の君はそんなこと気にしなくていいから。」
「本当に2002って書いてあったんですよ。念のためそれだけ計装に確認をお願いします。」
無視されそうな雰囲気だったので頑張って食い下がって要求した。
タイ人研修生の俺なんかの指摘は無視されるかと心配したが、しばらくして納品される機械の周りに人が集まりだした。
俺は他の機械グループ配属の新入社員と一緒に工場内の案内をされ、それが終わる頃に機械グループの課長さんに呼ばれた。
「君の指摘は正しかったみたいだ。間違ったプログラムがインストールされていたみたいだ。そんなことを指摘するなんてすごいな君は!」
良かった。
計装グループの地位を貶める事件を未然に防げて本当に良かった。
あの事件以降は計装グループは「電気工学科を卒業したのに電機メーカーに入れなかった落ちこぼれ」とか「外注したプログラムのインストールも出来ない無能」とか言われたよな。
前世の俺もタイで馬鹿にされて辛かったし。
その後、俺は部品加工班に配置されて金属を削る機械の操作を習うことになった。
CNCの使い方を説明されてもなぁ。
俺は工員じゃないけど使い方はわかるし。まあ研修だから仕方が無いか。
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「もしもし 村上か? 新入社員と一緒にお前が送ってきた研修のタイ人っで何者だ?」
「タイ人って アットのことですか?
彼はタイ工場若手のエースですよ。将来タイ工場の工場長になれるかもしれない逸材です。」
「そのタイ人が来週光電子に納品する例の大型機械の深刻な不具合を出荷前に一瞬で見抜いたらしいんだよ。」
「彼ならあり得るかもしれませんね。タイでも自動車メーカーに納めた機械の誤作動理由を一発で見つけましたから。」
「そんなに優秀なヤツなのか?そのタイ人って」
「いや タイ人なのにあれだけ日本語を習得したというのは確かに優秀ですが・・・ヤツは頭がキレる感じでは無いです。
ただ・・・ひらめきというかある種の嗅覚が尋常じゃ無いです。」
「村上がそんなに評価するような異才なら辞めないように今のうちに囲い込みをしておこうじゃないか。」
「私もそのうち本社に打診しようと思ってたんですよ。」
「ならワシが直接役員会で提案しておく。」
「宜しくお願いします 酒井常務。でもアットはそのうちタイに戻してくださいね。」
「わかった村上。配慮するよ。彼の処遇はとりあえず俺に任せてくれ。」
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