帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

腹上死して生まれ変わってタイ人に83話

機械製造会社の駐在員ユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。

死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。
コンケン大学を卒業したアットは前世で勤務していた会社に入社する。


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第83話 長期研修
 
 
 
マーブンクローンセンターでヌーイと再会し、スパゲティー屋でひとりで食べたにしては不自然に多い支払いをさせられたアットはその後も何度か呼び出されては、支払いや送迎をさせられた。
 
これは正に【アッシー、メッシー】といった扱いであった。

こんな扱いを受けても尚、拒否したり強い態度に出れないのは以前のようにヌーイに連絡を絶たれてしまう恐怖がアットを従順にさせたからである。


実際のところアットはヌーイのことをそれほど好きでは無い。
モチットのバスターミナルでヌーイを待ち続けた際に携帯電話の着信を待ち続けた悪夢の経験。
それはアットにヌーイからの着信を受けるだけで快感を与える効果があった。

余人にはこの心理がなかなか理解できないであろう。

あるはずの着信が無い → 不安 → ヌーイからの着信 → 快楽感 → 何か恩返しをしなければならない心境 → 支払いしてあげる

 
支払わされる金額も徐々にエスカレートしていき、呼び出されてみると明らかに宴会が行われた形跡のある大きなテーブルに一人で座るヌーイに「じゃあこれお願いね」と言われて1万バーツを超える飲食代を支払うこともあった。


洗脳されたような状況は突然終わることになった。


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「アット君には日本での仕事を覚えてもらいたい。」
 

村上部長に呼び出されたアットは期限未定の日本研修を命じられた。


この4月から日本本社に帰任する村上部長に合わせてアットも日本に向かい、本社で研修を受けて後に千葉工場と敦賀工場など国内主要工場で勤務する予定だ。

給料についてはタイの給料はそのまま支給され、さらに研修期間中は住居の支給に加えて15万円が支払われる。

ヌーイのおかげで貯金が無くなり、家賃収入にまで手を付けていた状態のアットにとってチャンスであった。

出発までの3週間で荷物をまとめ、部屋を整理する。

 
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日本に行くことが決まって我に返ったアットはヌーイに何と言おうか冷静に考える。

普通に日本に行くと言うのも面白くない。
自分を散々支払いだけに利用していたヌーイに何か一矢報いたい。


ちょうどその日の夜にヌーイから連絡があった。

「アット!今すぐ来て!」

場所は最初にヌーイと行ったシーフードレストラン。
車で行けば30分で行ける。しかしアットはこう答えた。


「ごめん。今チョンブリーだから急いで行っても2時間かかる」


「もー! どうしてバンコクにいないのよ! いいから急いで来てね」


すぐにアットはヌーイのいるレストランに向かった。