帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

腹上死して生まれ変わってタイ人に69話

機械製造会社の駐在員ユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。

死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。
コンケン大学を卒業したアットは前世で勤務していた会社【TKテクニカ】に入社する。


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第69話 機械の不具合 2
 
 
 

2001年4月。
自動車メーカーに納入した機械が急に誤作動を起こし、クレームを受けたが原因が分からず対応に苦慮していた。

村上部長に通訳として現場に同行した俺は問題の機械のすぐ近くで原因らしきものを発見する。



問題の発生している機械のすぐ近くには金属の表面を加熱処理する高周波焼き入れ機械があった。

この機械は高電圧で高周波数のマイクロ波を発生させて瞬時に金属を加熱する機械だが周囲にノイズが発生する。

この当時は複雑な自動制御機械が少なかったのでノイズによる誤作動に配慮があまりされていなかった。


「村上さん!原因はこの高周波焼き入れ機からのノイズによる誤作動に違いないです。」


俺は近くにいたタイ人マネージャーさんにお願いして高周波焼き入れ機の作業を少し止めてもらうようお願いした。

マネージャーさんによると、この機械は普段はあまり稼働していないそうで、今回も2か月ぶりに稼働させているらしい。



その高周波焼き入れ機を停止させると、ウチが納めた機械には問題の誤作動も無くなった。

その後何度も高周波焼き入れ機を作動させたり止めたりした検証した結果、村上部長も原因は高周波焼き入れ機だと確信する。


「は?自分の会社の機械のミスを人のせいにしやがって!
もしこの焼き入れ機が誤作動の原因じゃなかったらお前のところは本当に出入り禁止にしてやるからな!」


客先の自動車メーカーの生産部長に不具合の発生原因を村上部長が説明した結果、先方は不本意ながらも高周波焼き入れ機の影響を確認し始める。


「村上さん。とりあえず帰って良いから。また連絡する」


生産部長は機械の不具合が俺たちが原因で無いことを理解したようでとりあえず問題は解決した。
 

「アット君。ありがとう 良く原因に気がついたな。」


帰りの車の中で村上部長に褒められた。
 
前世で死ぬ前にはすでにこんなノイズは常識であった。
 
しかしそんなことを村上部長には言えないので、「高周波焼き入れ機の周辺に怪しい気配がしていましたから」と適当に答えておく。

苦笑しながらそれから黙ってしまった村上部長だが、数年後にはタイ法人の社長になる村上部長の俺に対する評価が上がって良かった。


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会社に戻ると計装担当者達は今も悲壮感を漂わせながらプログラムのチェックをしている。


「村上さん!すぐに問題が解決したことを伝えてもらえますか!みんなまだプログラムに問題があると思って必死に調べてます!」


自分達は部下には「報告・連絡を密にしろ」とうるさい。
しかし問題が解決したことは部下にはすぐに知らせない。
計装部署を罵倒しておいてこの扱いはひどいな。