帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

腹上死して生まれ変わってタイ人に61話

機械製造会社の駐在員ユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。

死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。
コンケン大学を卒業したアットは前世で勤務していた会社に入社する。

第1話はこちらから
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第61話 チャイラットさんの錬金術 




2000年9月。
機械設計から機械の生産を行う機械グループに異動して6か月。

直属の上司である機械グループのリーダーであるチャイラットさんから直接図面渡され部品の拾い出しを命じられた。

渡された図面に俺は違和感を感じた。
図面の右下には機械名や社名などの当社指定のインデックスがあり設計部署で描かれたと思うが、文字のフォント種類や寸法線の形式が少し違う。

こんな場合、下っ端の部下の俺としては違和感を感じても上司のチャイラットさんに何も言うべきではない。
俺はこの図面の部品を最優先で購買部署に発注依頼を行った。




俺は違和感を感じた図面の機械が仕上がる過程を注意しながら見守ることにした。

その機械の用途は製品が流れてくるベルトコンベアの上に置いて流れてくる部品の個数をカウントするだけの機械と言うより器具のようなもので、数日で完成した。


完成した機械は、通常は経理部署が発行するバーコードを張り付けてから梱包されるが試運転調整という名目でチャイラットさんが客先に持ち出してからは戻ってこなかった。


工場では工員が部品を持ち帰ったり、材料を横流しする事件が以前に多発したらしく工員だけでなく技術スタッフですら退社時の持ち物検査が厳重に行われている。
完成品も当然のように厳重に管理されている。


持ち出し管理が甘い製造途中の状態を利用し、チャイラットさんは自分で仕事を受注た機械を材料発注・組立を会社で行わせて完成前に納品することで収入を得ているのだ。


オーダーメイドの機械は小さなものでも数十万バーツで売れる。
社内の協力者がどれだけいるか分からないが、チャイラットさんはかなりの副収入を得ているはずだ。

数年後には新設されるチョンブリ工場で生産マネージャーになってからはもっと豪快にやるんだろな。

前世でのチャイラットさんは日本人幹部から不正を疑われ続けていたが、タイ人スタッフを束ねていたチャイラットさんの影響力を恐れて最後まで糾弾されなかった。


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チャイラットさんが後輩を連れて飲みに行くので誘われた。
こういった飲み会の支払いはすべてチャイラットさんだ。


タイ人の部下からの尊敬など所詮は飲み会の支払いの積み重ねなのだ。
俺は10年後に家賃収入を部下に還元して信頼される上司になろう。


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