帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

腹上死して生まれ変わってタイ人に60話

機械製造会社の駐在員ユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。

死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。
コンケン大学を卒業したアットは前世で勤務していた会社に入社する。

第1話はこちらから
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第60話 賃貸オーナーはつらいよ 2 




2000年6月。
バンコクでは高架鉄道BTSが開通しスクンビット通りの利便性は飛躍的に向上したが、俺が買った部屋に入居者はまだ居なかった。


俺は入居者の募集を日系不動産紹介会社に依頼し、入居者は日本人だけにこだわったからだ。
日本人はタイ人に比べて面倒なリクエストやクレームが少ないし、家賃は会社が払うので金払いも良いに違いない。


俺の物件が賃貸できる状況が整ってから待つこと3か月間。
ようやく1組の入居希望者と契約を結ぶことになった。



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日系不動産紹介会社の仲介で契約を結ぶのは20代後半の日本人男性とタイ人女性のカップル。
契約の場では日本人は全く喋らず南部訛りのタイ人女性が終始対応していた。

結局希望の家賃20,000バーツは18,000バーツに値切られた上に、毎月25,000バーツの領収書を出してほしいと要求される。

同時に購入したもう一つの部屋は未だに内装も出来ずに放置してあるので早く賃貸収入を得てもう1部屋の内装を急ぎたい。
俺はこの要求を呑んで賃貸契約を結んだ。


大家の俺としては適当に領収書の金額を水増しして出せる訳では無い。

タイでは賃貸収入を得る大家は賃貸金額の5%を税金として税務署に支払わなければならないし、この5%の源泉徴収によって税務署は俺の賃貸収入を把握してしまう。

家賃の支払い時に差し引かれる5%分の税金は交渉により入居者が支払うことになったが、税務署は実際は18,000バーツしかない家賃収入を25,000バーツだと認識されてしまい、確定申告では所得税の支払いが実際より多く発生する。

今回はもう1つの手付かずの部屋の内装を急ぎたいため仕方が無かったが、今後は出来るだけ避けたい。



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賃貸マンションのオーナーになったので電話の無い生活は何かと不便なので思い切って当時はまだ高価な携帯電話を買った。

折角買った携帯電話にかかってくる電話は店子になった日本人のタイ人嫁は苦情の電話ばかり。

普通はタイ語の出来ない日本人は仲介している日系不動産紹介会社を通じて苦情や要求がありワンクッションあるが、あの女はすぐに直接俺に電話をかけてくる。


ベランダのサッシが壊れたと呼び出されて行ってみるとサッシをロックしたまま無理やりこじ開けて壊している。
明らかにこいつが原因で壊したのに俺にロック部分を直せと要求してくる。

さらには床のタイルの色が気に入らないから取り換えろと要求する。


取り換えたければ勝手に取り換えてくれと突っぱねるが、しつこく何度も交換してほしいと電話がかかって来てタイルを替えないと部屋を出ていくと言い出した。


タイ人の女は「タイルは自分で買ってくるから張替えの手間賃だけ負担してほしい」と妥協してきた。
もうそろそろ勘弁してほしかったのでタイルの張替えの手間賃を負担してやった。

もうこれでクレーム生活から逃れられると思っていると、今度は貼り方が気に入らないとクレームの電話があった。


遅ればせながらこれは基地外レベルのクレマーだと断定し、俺はこいつからの電話を無視することにした。

こいつの番号は着信拒否に設定し、これで安心して仕事に専念できる。


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クレーマー女からの電話を着信拒否するようになってから家賃が払われなくなった。

俺から催促の電話をしてもあの女は電話を取らない。


ムカついた俺はいつも発行している領収書の宛名の会社に直接電話をかけて旦那の日本人と話をする。


「私はタイ語が分からないので嫁に直接聞いてもらえます?」


流暢な日本語で話す俺に向かって言うか?


「あなたの嫁は家賃を滞納し電話をとらない。こうなったら会社に25,000バーツの領収書を出しているが実際の家賃は18,000バーツだとバラして、しかも家賃滞納で裁判所に訴えてやる!お前の名前でな!タイ人をなめるなよ!」


俺の脅しに慌てた日本人はすぐに家賃の振込みに合意した。

さらに今後一切俺への直接の連絡はやめて日系不動産紹介会社を通すように強く申し入れる。


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この時点では理解できていなかったが、この後しばらくして俺はある法則に気がつく。

【最初に変な要求をする入居者はずっと変な要求をし続ける。】

【最初にすんなり契約してくれた入居者は何年たっても全く要求が無い。】


これは他の場面でもタイにいる日本人に共通するので、この経験が役にたったと思う。


紆余曲折があったが、こいつからの家賃収入のおかげでようやく2部屋目の内装と家具の購入が出来て稼働し始める。
部屋を購入してから3年も経過していた。



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