帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

腹上死して生まれ変わってタイ人に65話

機械製造会社の駐在員ユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。

死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。
コンケン大学を卒業したアットは前世で勤務していた会社に入社する。

第1話はこちらから
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第65話 給料100%アップ




2000年3月。
いつものように図面から部品の形状や寸法を拾い出して、購買部署に送る外注部品の注文書を作成していると製造部長の村上さんに呼び出された。

梶山さんが給料の大幅アップを製造部長の村上さんに相談したらしいから給料アップの件かと思いウキウキしながら指定された会議室に向かう。


「アット君。君は会社に不満があるのか?」


どうしてそんな話になるのだろう?
俺はすぐに否定する。


「不満などありませんよ。最近は機械エンジニアとしての仕事より通訳ばかり依頼されてますからストレスがたまってはいます。

ちょうど会社が通訳者を2万バーツで募集してるから、どうせ通訳ばかりさせられるなら梶山さんに辞めて入社し直したら給料が2万になるのかときいただけです。」



「梶山はアット君が辞めてしまうと心配していたが本当に辞める気は無いのか?」



「せっかく良い会社に入って機械エンジニアとして経験を積ませてもらっているのに辞める気なんてありません。
松下幸之助先生の本で『自分がこの会社に入ったのは運命だという覚悟を持ちなさい』と言われるように私は覚悟を持って働いています。」


「しかし日本語能力検定が1級で日本に留学経験もある私が15,900バーツで働くことはこの会社の通訳者の採用の妨げになっていると思います。
日本語検定2級の通訳者で給料相場が2万バーツですから。
さらに既に働いている社員の日本語習得意欲も無くなると思います。」



村上部長は後ろ向きな発言や愚痴を嫌う人である。
あと松下幸之助マニアなのでよく松下幸之助の本から引用して説教する人だ。

だから松下幸之助の名言を引用して前向きな発言をすれば必ず気に入られる。

俺はバンコク紀伊国屋書店で見つけた松下幸之助の本を買って机の上に置いている。
いつも休み時間に読んで、村上部長が好きそうな名言には付箋を付けるようにして村上部長へのアピールを忘れない。



俺の前向きな発言が幸いし、4月から給料倍増の3万バーツを獲得した。
ローンを支払っても2万バーツ以上残るのでソープランドにも行ける。

*これまでの家賃収入は2部屋目の内装資金のため全く使えていません


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