帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

腹上死して生まれ変わってタイ人に110話

「毎朝豆カレーを美味しく食べられるようになってからじゃないですかね。インドは。」

アッタポンさん 36歳 男性



第1話はこちらから
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第110話 インド人と戦う1



2009年1月。
インドのムンバイ工場に着任した。

インドは暑い。渋滞が酷い。トイレが汚い。

こんなに暑いのに1月はまだ過ごしやすいだと?
この国はヤバイかもしれない。

ただ初日に食べたバターチキンカレーは美味しかった。


ムンバイ工場はインド人ばかりでなんか黒いし、臭い。
インド人は俺に「何で日本人じゃないんだよ?」みたいな視線を送って来る。

これは苦労しそうだ。




「アット君 久しぶり! インドは大変だけど頑張ってね」


お前も頑張れよ!と田坂工場長に言い返してやりたくなった。
お前がしっかりしないから俺がインドまで来たんだよ!!!

着任の挨拶のあとすぐに田坂工場長はインド人幹部達に俺を紹介した。


やっぱしみんな「タイ人のコイツが何で製造部長なんだ?」って顔している。
生産を滞らせた責任者の癖に偉そうにしやがって!


早速製造現場に出る。
タイと同じような工作機械や組立ラインはきちんと構築されており人員も十分揃っているようには見える。


製造計画工程表と見比べて遅れている部分を探してみると・・・
組立が進まずに遅れている場所を見つけた。


「イエッサー キャンノット サー」


加工した部品が組み立てられないから組立作業が中断したらしい。
担当のエンジニアが出来ないと堂々と言い訳してきた。

部品が噛み合わずに組立が出来ないらしい。


「お前・・・ 加工が間違ってるから組み立てらないのだろうが!
部品の切削加工工程に戻せ!」


「イエッサー キャンノット サー」


今度は少し申し訳なさそうに出来ないと言う。

関係者を集めて話を聞くと

1. 組立しようと思ったらかみ合わなかった
2. かみ合わないことを加工部署に言った
3. 加工部署はどこが悪いのかわからないから同じものを加工
4. 再び仕上がった部品も組立出来ない
5. だからあきらめた

こんな感じ。



製造の流れを滞らせながらも偉そうにラインの責任者を名乗るインド人に問い詰める。


「イエッサー キャンノット サー」


こいつらはこれしか言えんのか?


「オイ! お前がラインの責任者だったら仕事を完了させろ!」


「ノー キャンノット サー」


「お前の仕事じゃ!」

そいつの胸ぐらをつかんで怒鳴った後、作業着の襟をつかんで組立現場までつれて行った。
そしてかみ合わない部分を俺が測定し、自分で図面に赤で書き込む。


「お前の仕事じゃ!」

そう叫んだあと、切削機械のCADCAMデータを作る部署に行って担当者に赤書きした図面を渡してすぐに修正させる。


「これもお前の仕事じゃ!」

再び叫んだあとで修正できた切削機械のCADCAMデータで再び加工。
そして組立部門に持っていく。


「これが全部お前の仕事じゃ!マネージャーだったらやれー!!!」

製造ラインのマネージャーは涙目になりながら反論する。


「ノットマイワーク!」

再度俺は胸ぐらをつかんでお互いの鼻が接触するぐらいの距離で叫んでやった。


「お前の仕事じゃ!嫌やったら部下にさせろ!出来なかったら辞めろ!」



この作業を数日かけて俺はインド工場の問題が発生しているすべてのライン、すべての工程で繰り返した。
一通り終わった頃にはインド工場にいるインド人マネージャーの数は・・・・辞めて半分に減った。




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