帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

腹上死して生まれ変わってタイ人に59話

機械製造会社の駐在員ユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。

死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。
コンケン大学を卒業したアットは前世で勤務していた会社に入社する。

第1話はこちらから
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第59話 異動 



2000年4月。
入社から3年が経過し、給料はベースアップにより入社時の14,000バーツから15,900バーツまで上昇し、ローンの支払いをしても生活に少し余裕が出てきた。

俺の所有するコンドミニアムは内装を整えベッドやテレビを揃えたが、まだ借り手が現れず投資金額の回収が始められない厳しい状態が続いている。




今月から3年間お世話になった機械設計部署から機械の製造を行う機械グループに異動となった。

異動した生産グループで新たに俺の指導係になったのはチャイラットさん(38)。

設計でお世話になったノックさん(41)(後に技術部門のタイ人トップとなり、会社の副資材の発注を自分の個人の会社に発注させて利益を得る)の2歳年下で後にノックさんとタイ人技術部門のトップである生産部ゼネラルマネージャーの座を争って敗れる人だ。


このチャイラットさんはチョンブリー出身で、後に会社がチョンブリーに第2工場を建設すると第二工場の生産マネージャーとなる。

第2工場の生産マネージャー時代に会社の金を自分のポケットに入れるシステムを構築することに成功し、その金でチョンブリーで広大な土地を購入するのだ。

土地を買った数年後に工業団地がその土地を高い値段で買い取ったのでさらに大儲けをする。



俺が前世で勤務していた頃にはチャイラットさんとノックさんは会社にバレずに金をうまく自分のポケットに入れるシステムを構築した双璧のタイ人に部下として就くのは幸運だと思う。

これからノックさんに引き続き、このチャイラットさんにもしっかり媚びつつ会社の金をうまく手に入れるシステム作りを学んでいこうと思う。



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機械グループに異動した俺に与えられた仕事は図面から部品を拾い出して購買にリクエストする業務だ。
設計から上がってきた図面をじっくり見てひたすら部品毎に寸法や数量を拾い出して表にまとめていく。

表にまとめられた部品リストは加工内容やサイズごとに分類し外注に出すために購買部門に送る。




機械を作るにあたってだいたい数千個の部品が必要で、納期を急がされる場合には設計完了からすぐに機械の組立を開始するため部品の発注を急ぐためには部品の拾い出しも急がされる。

急いで拾い出しを行うので製作開始してから足りない部品が発覚することも多く、部品の拾い漏れ(発注漏れ)が多ければ納期に大きな影響を与える。


タイ人は部品の拾い出しのようなスピードと精密さを求められる作業は嫌がるため、俺のような若手に押し付けられることが多い。

俺が前世で所属していた計装グループの作業工程が、機械組立の際の部品漏れが原因だったことも多く、部品の発注漏れが他部署に及ぼす苦労を鮮明に記憶しているのでこの仕事に真剣に取り組んだ。




紙の図面から視力の悪い方の目にルーペを鉢巻きで固定し、至近距離でひたすら図面を見続けた俺はルーペ君と呼ばれるようになった。

俺が図面の拾い出しを担当するようになって部品漏れが減っているように思う。

誰も褒めてはくれないが、入社して10年は地味に頑張ろうと決めて
いるのであと7年は会社の金をポケットに入れることは考えず、ひたすら真面目に働くようにしようと思う。




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