帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

腹上死して生まれ変わってタイ人に53話

機械製造会社の駐在員ユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。

死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。
コンケン大学を卒業したアットは前世で勤務していた会社に入社する。

第1話はこちらから
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第53話 コンドミニアムを買う 




1998年4月。
もう少しでソンクラーン(タイ正月)を迎える頃。
日曜日にアットはひとりでトンロー通りを散策しているとコンドミニアム(分譲マンション)販売の大きな看板が目に入った。

建設工事が始まったばかりのようだが、この場所は前世で会社が借りて俺が住んでいたアパートだと思う。




バンコクコンドミニアム(分譲マンション)を建築する開発会社は建築途中から分譲販売を始めることが多い。
完成までの資金を準備せずに販売を始めて、販売で得た費用で建築費用を捻出するのだ。


資金の不十分な開発会社は建物の基礎工事の段階から販売を開始しないと建築工事が捻出出来ない。
しかも建設の初期段階では買う客が少ないため安売りすることが多い。
そして完成に近づくほど割引率は少なくなっていく。


部屋の売れ行きが悪ければ資金が集まらず建築途中でとん挫して未完成のまま廃墟と化す物件もある。


買った物件が完成せずに廃墟と化すリスクを負うが、建築工事の初期段階でコンドミニアムを購入すれば投資費用が抑えられて家賃収入の利回りも大きい。




今ある資金でコンドミニアムを買って家賃収入を得るのも悪くない。

この物件は俺が住んでいたアパートなので途中で資金不足でとん挫することは無い。
俺の記憶違いだったとしても俺が住んでいた周囲には廃墟ビルや不自然な空き地も無かった。

この物件は間違いなく完成して住めるようになるから安心だろうとコンドミニアムの建築現場の正面に開設された販売事務所に入ってみる。




建物が完成すれば取り壊すはずの販売事務所なのだが内装が豪華で、中央には立派な完成後の模型が設置されている。

俺が建物の模型を眺めていると男女の販売員が声をかけてきた。



「今回お探しの物件は居住目的ですか? 投資目的ですか?」



自分で住まないで家賃収入を目的とした投資だと答える。
すぐに購入金額と家賃収入見込みの資料を持ってきた。
タイ人にしてはなかなか気が利いている。



勧められた物件は1ベットルームで広さは80m2 完成後の販売定価は199万バーツ。

建築途中なのでそこから20%割引の159万バーツらしい。

現在の資産は140万バーツで少し足りない。



「140万バーツならキャッシュで買うよ。」


「同時に2部屋買って頂けるなら280万バーツに値引きします。」

と男性販売員。


俺には2部屋キャッシュで買うお金が無いので無理だと言うと、女の販売員がすぐに寄って来てローンでの分割購入プランについて資料を出して説明を始める。

280万バーツの不動産購入にあたって自己資金が50%あると担保が十分なので簡単に銀行が低金利で金を貸してくれるそうだ。

140万バーツの20年ローンで金利が7%で毎月の支払いは8,500バーツとなるらしい。



提示された利回り計算書での家賃収入は1部屋当たり毎月2万バーツ。
1部屋分の家賃収入でローンを支払っても毎月お金が残る。


建築工事が終わるまで1年以上家賃収入が見込めないが、毎月8,500バーツなら今の給料から支払えそうだ。



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1部屋だけの賃貸収入では新たにもう1部屋増やす資金を得るには8年間かかりますが、2部屋の賃貸収入だと4年間で同じようなコンドミニアムが購入出来る資金が得られます。

その資金を元にキャッシュで1部屋、さらにローンでもう1部屋を同時購入すれば4部屋のオーナーになれます。

その2年後に同じようにキャッシュで1部屋ローンで1部屋購入すれば6年後には6部屋のオーナーになれますよ。


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などと巧みに勧められて、俺は20年ローンを組んでコンドミニアムを2部屋買ってしまった。

建築工事が完了するまであと1年とのこと。

完成するまでの1年間は家賃収入無しでローンのみ支払い続けるので生活は苦しくなる。
しかし給料も徐々に上がっていくので家賃収入に手をつけなくても生活していけるだろう。


貯金がすべて無くなり、20年ローンまで組んでしまった
販売会社に作ってもらった賃貸収入計算書を見ると入居率が90%以上を維持し続けてしかも今回のように建築工事が始まったばかりの割引率の多い部屋を毎回都合よく見つけなければ6年で6物件の購入などできそうにない。

しかも販売員の説明だと家賃収入はすべて新しい部屋を買う資金にしているが、3部屋分のローンの支払いを考えると6年で6部屋は絶対に無理だ。


なんとか10年後には6物件のオーナーになって賃貸収入で贅沢な暮らしが出来ることを目指して頑張ろう。



第1話はこちらから