帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

腹上死して生まれ変わってタイ人に58話

機械製造会社の駐在員ユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。

死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。
コンケン大学を卒業したアットは前世で勤務していた会社に入社する。

第1話はこちらから
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第58話 賃貸オーナーはつらいよ 1 



1999年4月。
コンドミニアムの購入契約をしてから1年が経過し、契約時点の話ではそろそろ完成する頃かと現地に行ってみた。


完成しているはずの建物はまだシートと足場で覆われている。
建設現場の隣にある販売事務所で工事の進捗状況を確認しようとすると、「SOLD OUT」の張り紙が張られ、販売事務所は既に閉鎖されていた。


全室が完売したので販売事務所は閉鎖されたようだが建物はまだまだ完成しそうにない。
開発会社に苦情の電話を入れたが、「もうすぐ完成します」としか言わず、明確な完成時期を言わない。

1か月毎に開発会社に電話をかけて何度か同じようなやり取りを繰り返し、最終的に予定より6か月遅れて購入者検査と引き渡しが行われた。



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部屋が完成し、ようやく賃貸収入が得られると引き渡し検査に向かった俺は愕然とする。

ダイニングおよびキッチン、シャワー室、トイレの床にはタイルが貼られているが、寝室は床も壁もコンクリート打ちっぱなしのままで未完成であった。

俺が担当者に文句を言うと、契約書の中の内装仕上げ表を見せられる。
寝室の内装は「BY OWNER」(入居者が行う)となっていた。

タイのコンドミニアム(分譲マンション)は好みの内装を行いたい購入者が多いらしく、内装前の引き渡し物件が多いらしい。



途方に暮れる俺に担当者は「内装業社を紹介します」というので標準的な内装でフローリングの床と壁紙、一般的な扉などを指定すると費用は20万バーツだった。

その場は即決しなかったが、後で別の業者に見積もりをもらっても金額は同程度であった。


毎月9,200バーツのローン返済を抱える俺には貯金も、新たに借金する余裕も無い。
賃貸に出すために必要最低限の設備(テレビ、冷蔵庫、洗濯機、ベット、カーテン)を揃えると30万バーツを超える。

即ち俺が30万バーツ追加で支出しなければ賃貸収入を得られない!しかも2部屋なので60万バーツ!!!



8年で投資が回収できるなどと都合の良いセールストークであったが、内装費用を含めると結局10年は必要だ。
今の俺に追加で30万バーツの資金を捻出するのは不可能なので1部屋をあきらめて売却しようか悩む。



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悩んだ末に俺は意を決してナムワーンをコンドミニアムの部屋に案内した。



「この部屋を20年ローンで買った。」


         「すごい!!ここは私たちの部屋???」



と驚いて舞い上がるナムワーン。
俺は30万バーツの捻出をナムワーンに頼むことにした。


俺の予想ではナムワーンはすでに10万バーツ以上の貯金がある。俺の貯金と後はナムワーンに銀行から借金させれば30万バーツの捻出は可能だ。

今のところ結婚するつもりが無いナムワーンに大金を支払わせるということは俺の人生がこいつに縛られるリスクを負う。

しかし不労所得を得るためにここで引き下がりたくは無い。



「ナムワーン。悪いが二人で住むのでは無く賃貸に出す。
賃貸に出さないとローンが払いきれない。
頭金で俺の貯金は無くなり、ローンの支払いでお金が無い悪いが内装と家具の費用25万バーツを貸してほしい。」



「アット!25万バーツは返さなくても良いし、ローンの支払いも自分が手伝うから一緒にここに住もう!!!」



あくまでここに二人で住みたいというナムワーンに対して、
「5年間は賃貸に出して5年後に一緒に住もう」
と説得して何とか不足分の25万バーツをナムワーンに出してもらい
内装工事が始まった。



内装工事は床と壁と寝室の扉を付けるだけなのだが、工事開始まで2か月も待たされて、完成したのは2000年3月。

売買契約を結んでからちょうど2年経過してようやく貸し出せる状態が整った。

2部屋同時購入したもう1部屋は内装工事をする金も無く放置中であった。




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