帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

腹上死して生まれ変わってタイ人に29話

生産機械メーカーのタイ法人に勤務するユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。

死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。

第1話はこちらから
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第29話 バンコクでのアルバイト2



バンコクでの1か月の出稼ぎアルバイト生活の最終日に出張通訳の仕事が入った。
出張通訳といえば会議や商談・役所訪問が多かったのだが、今回は日本人男性とタイ人女両親顔合わせおよび結納金額の交渉の通訳であった。


交渉の場には二十代半ばの日本人男性とその母親。
同じく二十代半ばのタイ人女性は母親と兄。
5人での顔合わせに俺が通訳として加わった。


最初は和やかな雰囲気でお互いの自己紹介や二人の馴れ初めや将来の展望などが話されたが、結納金額の話になってから空気が変わった。


花嫁側(タイ人女性の母親)が結納金は100万バーツ(当時のレートで400万円)必要だと主張。
花婿側(日本人男性の母親)は9万バーツしか払えないと主張。

この大きな希望結納金額の隔たりが、今回通訳者を交えての交渉となった理由であった。



花嫁側:相手が日本人だから100万バーツ出してほしい。

花婿側:日本の慣習で花婿の給与3か月分が相場なので現地採用としての給料3万バーツの3ヵ月分として9万バーツしか出せない。

花嫁側:結納金は両親が出せば良い。

花婿側:結納金は本人の出せる範囲で出すものだ。

花嫁側:うちの娘は大学を出ているから。

花婿側:うちの息子だって出ている。

花嫁側:日本人から結納金100万バーツをもらった人もいる。

花婿側:出せない物は出せません。このままだとこの結婚は白紙に戻すしかない。


双方の考え方や風習が違いすぎて、通訳としてそのまま訳していると交渉決裂は間違いない流れだった。
当事者である結婚する二人は交渉では全く意見を言わないが通訳者である俺になんとかしてほしいと懇願してくる。

変なことに巻き込まれると面倒なので、通訳者としては発言をそのまま正確に訳すことが役割だと突っぱねた。

そのあとしばらく不毛なやり取りが続いたのちに休憩となった。



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別室で休憩している俺に新郎から、今回の交渉をうまくまとめたら1000バーツのボーナスを渡すから助けてほしいと依頼された。

今日の日当である600バーツを超える報酬にやる気を出した俺は
お互いの母親同士の考え方や認識に大きな隔たりがありすぎることが原因だと思ったので補足説明する。




まず俺は日本人側の母親に説明する。


タイでは結納金額を決める要素として娘を育てるのに費やした教育費があります。

先方が大学卒だと言うのは結納金は相場金額より上乗せされるべきだと言う意味です。
9万バーツと言うのは、中流のタイ人同士の結納金としては若干高めではありますが、大学卒で外国人と結婚するにあたっては少ないという先方の主張はもっともだと思います。

タイの結婚式では結納金を現金を並べて披露するので、相手の母親としては面目が立たないということだと思います。

いくらだと言える立場ではありませんが、20万バーツぐらいは必要ではないでしょうか。




その後タイ人新婦の母親に説明する。


先ほど100万バーツの結納金を支払ったケースを娘さんから詳しく聞きましたが、60代の日本人男性と18歳のタイ人女性の結婚だそうですね。

これは日本人の中でも特に裕福な方が、若い女性をお金に物を言わせて人身売買のように娘を買ったケースのようです。


それに比べて、ごく普通の日本人の家庭の出身で、お似合いで年齢も近い愛し合う二人の結納金額の参考にするにはあまりにも違いすぎます。

あくまで、タイ人同士の場合の結納金より高めでご納得してはいかがでしょうか?
これからも親戚として付き合いをされるでしょうし、場合によっては娘さんが日本の旦那さんの実家に住む可能性もあります。

ここで相手の気分を害してまで高い結納金にこだわると娘さんが日本で居心地が悪くなるかもしれませんよ。



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結局、結納金は19万9999バーツで合意された。

タイ人新婦の母親への説明は面倒でとても疲れた1日であったが、特別ボーナスとして1000バーツをゲットした。


予定外の収入を持ってコンケンに戻る。
この疲れとストレスをナムワーンのおっぱいで癒してもらおう。

携帯電話の無い時代ではあるが、1か月間全く連絡を取っていない状態はどうなのだろうか。


第1話はこちらから