帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

腹上死して生まれ変わってタイ人に64話

機械製造会社の駐在員ユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。

死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。
コンケン大学を卒業したアットは前世で勤務していた会社に入社する。

第1話はこちらから
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第64話 通訳の山口さん 3
 
 
 

通訳として新しく入社した日本人の山口さんに通訳としての能力が無いことが判明した翌日から3日間、山口さんは会社に出勤してこなかった。

3日間の無断欠席のため事務担当の日本人駐在員である梶山さんに頼まれて一緒に山口さんの宿舎を見に行くことになった。



山口さんの宿舎に行く途中で梶山さんと山口さんについて話をする。

山口さんは名前をケンヂと名乗ったが、戸籍上の名前はアレキサンダー
入社手続きの際に知った梶山さんが詳しく尋ねたところ、この名前は日本人の父親が名付けたらしい。

アレキサンダーというのはギリシャのアレキサンドロス大王の英語読みである。

俺の常識として日ータイハーフの子供の名前はタイ人寄りか、日本人寄りに付けると思う。
山口さんの父親はどういう思いでこの【アレキサンダー】という名前を名付けたのだろうか。

何か深い理由があるのだろうか?
単なる馬鹿なのか?
自意識過剰で息子が世界に羽ばたくことを見越した名前なのか?


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山口(アレキサンダー)ケンヂさんの入社時の条件を聞くと、給料6万バーツに加えて通勤の車両と燃料代、宿舎の手配とその家賃、携帯電話のすべてが会社支給ということだった。


通訳者が居なくて困っている時だったので現地採用通訳としては破格の条件をのんだらしい。

給料15,900バーツで生産グループの仕事と通訳でこき使われている俺は何なのだろうか?
 
俺は梶山さんに皮肉を込めて聞いてみた。


「梶山さんは日本語を話すタイ人に何か深い恨みがあるのですか?
 その腹いせに問題のある日本人通訳に高額な報酬を与え、タイ人である私に待遇の差をつけることで報復をしているのですか?」


梶山さんは慌てて答えた。


「アット君の給料の大幅アップは村上さんに了解を得たから大丈夫だよ!」


彼の大幅アップには期待できない。給料20%アップとかいっても3,000バーツの昇給でごまかすのだろう。
 
山口(アレキサンダー)さんに会社が提供したアパートに到着すると、会社が貸し出している車が止まっていたが部屋の中には誰も居なかった。

梶山さんが管理している合鍵で中に入ると、部屋の中は荷物が無く、すでに出て行った後だった。

会社の車は無事であったが、車の中はひどく汚れていて、動物でも飼っていたような臭いがする。
良く見ると中には動物の毛がたくさん落ちていた。


その日は梶山さんと二人で会社の車の掃除を夜遅くまでしてから帰宅した。



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タイ語通訳として使えなかった山口(アレキサンダー)ケンヂさんであるが、たった2週間ほどの勤務期間だが周囲から借金をしまくっていたことが判明する。

俺も最終日に1000バーツ貸していたし、梶山さんの1万バーツを筆頭に大勢から金を借りていたようだ。


イケメンで長髪の山口アレキサンダーは、入社した時から寸借詐欺を狙っていたのだろうか?

彼がタイ語が出来ないのか通訳出来ないほど馬鹿なのか分からない。
タイ語能力や通訳としての能力も確認しないで採用した梶山さんの責任だと思う。