帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

腹上死して生まれ変わってタイ人に56話

機械製造会社の駐在員ユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。

死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。
コンケン大学を卒業したアットは前世で勤務していた会社に入社する。

第1話はこちらから
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第56話 馬鹿なタイ人に状況を理解させるには 




母親が賭けトランプで作った借金の返済を俺にさせるためにロイエットから両親が来ている。

最初から賭けトランプの負け分の補填を俺に頼まずに親戚や妹に伝言を伝えさせるから金のネックレスを盗まれて余計な出費になった。



「アット! 家の田んぼが全部無くなってしまう!」



自分が賭けトランプに負けた借金を支払うために、金貸しから田んぼを担保に借りたのは母親だ。
自分で原因を作っておいて借金を補填しない俺が悪人のような発言をする母親。


タイ人。特に田舎のタイ人は不幸な状態に陥った原因は全く関係なく【不幸な状況】は憐れむか助けなければならない風潮がある。
タイ語には

สมน้ำหน้า ソムナムナー ざまあみろ


という言葉があるが、実際に聞いたりテレビでも使うことは非常に少ない。

とりあえず10万バーツを何とか工面しないといけない。
払いはするが、俺にもう金が無いことや少なくとも2年は金が無い事を理解してもらわなければならない。

さてどう言えば理解するだろうか。



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両親は俺が10万バーツを渡すまで帰らないつもりのようだ。
母親は二言目には「アットは田んぼが無くなっても平気なの!」と言う。

「お前は大切な田んぼを担保に金を借りても平気なの?」と言ってやりたいが、すぐに銀行に行って借金のお願いをする。


コンドミニアムの購入代金を借りた銀行に融資枠を10万バーツ分広げてもらってこれからの返済に上乗せしてもらえないか交渉する。

融資枠以上に価値のある担保があるため、すんなり10万バーツを借りる事が出来た。20年ローンの返済額が毎月8,500バーツから9,200バーツに増えてしまったが仕方が無い。


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用意した10万バーツを持って両親と対決する。
俺は出来るだけシンプルに説明する。



このお金は銀行で借りてきた。
返すまでに2年かかる。
2年間は本当にお金をもう出せない。
お金が無いから2年間はロイエットに帰らない。

2年間は俺をあてにしないでほしい。



父親に説明し、父親から母親に説明してもらう。

給料明細を見せて説明しようかと思ったが、こいつらは情報量が多いと混乱するため出来るだけシンプルに説明したつもりだ。



「分かった分かった」と神妙にうなずく母であったが、帰り際に母親は俺に言う。



「アット。来年のソンクラーンは帰ってきなさいね」



・・・・・・全く理解してない。

再来年のソンクラーンに帰ると答えたが、出来れば今日が両親との永遠の別れにしたい。


両親に俺には金が無いことを理解させるのは無理だと分かった。

今は現金こそ無いがコンドミニアムを2部屋持っている。銀行ローンの負債を除いても100万バーツ以上の資産があるのに金が無いふりをするのは無理かもしれない。



今月中に引っ越そう。



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