帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

腹上死して生まれ変わってタイ人に23話

生産機械メーカーのタイ法人に勤務するユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。

死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。


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第23話 帰国

 

「留学したといっても日本でいくらかはお金をもらったんでしょ?」
 
 
 
バンコクに着いた俺が母親に帰国報告したとこの第一声がコレだった。
 
10か月の日本の留学生活を終えバンコクに到着したアットはすぐに気が重くなった。

最初は日本のお菓子やお土産を買おうかと思ったが実家に持ち帰ると俺が金を持っていると思われるため、帰りの荷物には持ち込み限度を超える焼酎やウイスキーだけだった。

これは自分で飲むのでは無く、少しでもお金を稼ぐためバンコクの日本料理屋に持ち込んで買い取ってもらうために買ってきたのだ。
 

アポ無しで訪ねた日本料理屋では中身を怪しまれて買ってくれず途方に暮れていたが、ようやく1店だけ購入してくれた店があった。
 
次回日本に行くときは事前に買う酒の銘柄など実際に依頼を受けてからにしようと反省するアットだった。


今回日本から持ち帰ったお金は約6万バーツ。
このお金で大学3年生までの学費や生活費を賄わなければならない。
現金を持ち帰ったり銀行預金残高が両親にバレると高確率で没収されるため新たにバンコクで口座を開いた。

 
ATMカードや6万バーツもの残高のある預金通帳を両親に見つかると危険なので、ロイエットに支店の無い銀行を選び、6万バーツの入金履歴を残さないために最小金額で銀行口座開設後に通帳記載なしで6万バーツをATMで預け、その後ATMカードは処分した。


万全の状態でロイエットに戻る。

両親にはお土産としてバンコクで買ったウイスキー。弟たちには同じくバンコクで買ったお菓子を渡した。
こいつらに日本のお土産の価値もわからないのでバンコク土産の方が喜ばれる。


子供が日本に留学するのに、たった1000バーツしか渡さない酷い親。
 
さらに「日本に留学したのに給料は出なかったのか?」と意味不明なことを聞く父に

普通は留学するとお金がかかる
それがタダになった
タダで日本語がペラペラ喋れるようになった
これで将来お金が稼げる

と馬鹿でも理解できるように説明するも釈然としないようだった。
まあ現実には毎月4万円もらってたけどね。


父親には「日本でどうやって生活をしたか」など根掘り葉掘り聞かれたが、これは間違いなく「子供の生活が心配だった」というより
も日本での生活費の余剰金を隠していないか調べられているとしか思えない。


そういえば父親のピックアップカーが新しくなっている。
コイツは誰かから【日本に留学すると毎月生活補助金が出る】という情報から勝手に期待して新車購入の暴挙に至ったようだ。
 
尋問のように奨学金の事を聞かれた。
まだ納得していない。
危険だ。飢えた狼のような目で息子を見るな。


こんな両親に頑張って稼いだお金を取られる心配があるため今後はロイエットの実家には極力近づかないように心に決めながら、疑われないように大量のもち米と少しの現金をもらってコンケンに戻る。


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コンケン大学付属中学に戻り、モー6(高校3年)の生活が始まった。
日本留学前に付き合っていたモッドを探したが見つからない。友人にモッドの事を聞くと去年学校を辞めてバンコクに働きに行ったそうだ。

バンコクに出てからどんな仕事をするかわからないが早い段階で
ソープかゴーゴーバーに転職するのだろうな。


元彼女であったモッドのバンコク風俗デビュー(推測)を聞いて少し感傷に浸ったアットであるが、子持ちのモッドのことは忘れて残りの高校生活を学業に専念しなければならない。

今は成績上位を維持してコンケン大学への推薦入試の権利を得ることが一番重要なのだ。