機械製造会社の駐在員ユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。
死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。
コンケン大学を卒業したアットは前世で勤務していた会社に入社する。
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第55話 ロイエットからの刺客3
先日貯金をすべて使ってさらに20年ローンまで組んでコンドミニアムを2物件購入したため貯金が無い。
4月から給料が10%ベースアップとなったが、元々基本給は9,000バーツなので増えたのはたった900バーツとクソみたいなもの。
基本給9,000バーツに日本語手当5,000バーツとベースアップ分900バーツの合計は14,900バーツ。
ここからローンで8,500バーツ返済すれば残りは6,400バーツ。
これ以上実家から金の催促をされても貯金する余裕の無い状態が解消されるまで、しばらく引っ越しして実家との連絡をしばらく絶とうかとナムワーンに相談してみる。
「ごめんアット。・・・・実は・・・・。」
嫌な予感が的中した。
先日弟のヌンに盗まれた後、俺がナムワーンに補填してやった金のネックレス5バーツ分(76グラム相当)をエーに盗まれたようだ。
本当にこいつらは学習しない。盗んだのは身内でしかも注意喚起しなかった俺にも責任があるが・・・。
金の隠し場所について前回盗んだ弟のヌンから妹のエーに引き継いでいたに違いない。
残念ながら今の時点でナムワーンに金を補填してあげる金が無い。
隠し場所を変えず、貴重品の管理が甘かったナムワーン責めても意味が無い。
俺の家族をこのアパートに泊めない事と貴重品の管理を見直すことをナムワーンに指示し、毎年の年末のボーナスから少しづつ金を買ってやることにした。
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「アット! どうして家に電話もしないの!」
1998年5月。
来月に引っ越すべく準備を進めている頃。
父親の運転する車で両親が突然バンコクにやって来て開口一番母親に怒られた。
ソンクラーン休暇にロイエットに帰省しなかったから心配だという名目で両親が来た。
俺を気遣う言動は全く無い上に母親は終始機嫌が悪い。
「アット! ウチの田んぼが取られてしまうの!助けて!」
話の脈絡が全く見えない。
機嫌が悪く、帰省しなかったことを責めた直後に助けろ?
仕方なく父親に経緯を確かめてみる。
母親が地元の金貸しから田んぼを担保にお金を借り、その返済が滞っているため田んぼを取り上げられるらしい。
借りた金は10万バーツ。
何の目的でそんな大金を金貸しから借りたのか父親も把握していないようだ。
普通は10万バーツもの大金が借金として明るみに出れば大問題であるが、父親も俺が帰省してくれば解決できると楽観していたのでその場では母親に問い詰めなかったらしい。
そんな頼みの綱の俺が帰省してこないため、親戚や妹を使って催促させにバンコク送り込んだが一向に俺が帰ってこない。
仕方なく両親が直接バンコクに来たらしい。
今の俺に10万バーツは無い。
しかしとりあえず借金した理由を聞いてみた。
母親が仲間内で行っていた賭けトランプで負けが込んだのが原因だった。
仲間内の賭けトランプに負けたんだったら支払いを待ってもらったら良いのに。
「負けを支払わないと賭けトランプに参加出来ないじゃないの!」
そこは怒る所か?金を払わせようとする俺に。
賭けトランプの負けた金を払わないとトランプに参加させてもらえないため田んぼを担保に金を借りて俺に払わせるため俺に帰省の催促をしたのか。
正直言って金が無い。
「バンコクで働いているのにお金が無いなんて嘘!ヌンは2か月働いただけでバイクを買えたのに!」
それは違う。父親を見ると目を逸らされた。
ヌンは盗んだ金でバイクを買ったんだよ。
給料明細を見せても納得しないだろうな。
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