腹上死して生まれ変わってタイ人に13話
生産機械メーカーのタイ法人に勤務するユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。
死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。
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第13話 モッド
コンケン大学付属中学には第二外国語として週に1回の日本語の授業がある。
なので質問のたびに俺は先生の通訳を頼まれるようになった。
日本語でユミ先生に質問内容を説明する俺を見て他のクラスメイトに、俺は相当日本語が出来る生徒だということが知れ渡ってきた。
「アット日本語教えて!」
俺の日本語能力に食いついて来た女の子がいる。
小柄で三つ編みのおさげ髪、色黒で丸顔鼻ペチャの愛嬌のある女の子【モッド】。
モッドとはアリという意味。アリなのに女の子のニックネームとなっている。
モッドはコンケンの隣のウドンタニ出身で俺と同じく寮生活中。
タイの美的感覚では色白面長が美人とされるので、モッドはタイ的にはそれほど美人ではないが、パッチリとした大きな目に整った顔立ちは【元日本人】の俺から見たら十分な美少女だ。
オイウェンより色黒だが明るく活発な娘で、しかも美少女。
彼女の将来の夢は『日本語の通訳になってバンコクで働くこと』らしい。
美少女に教えてほしいとお願いされたので、早速今日の放課後に日本語を教えてあげる約束をした。
オイウェンといいモッドといい女の子の方から次々とアプローチをかけてくるのは前世の俺には起こりえなかった出来事だ。
自分で鏡を見てもアットはハンサムでは無いと思う。
しかし東北部の出身にしては肌が白い方なのでその辺が評価されているのであろうか。
前世の【ユウイチ】は、就職するまで彼女が出来たことは無かった。
就職してからは保険の外交員のお姉さん、スナックのお姉さんなどと「付き合った」経験はあるが・・・積立型の生命保険に加入させられたり、何度もスナックに通ったりと、本当に恋愛関係だったのかと今から思うと自信が無い。
生まれ変わってタイ人になってしまったとは言え、女に不自由しないのはとても幸せだ。
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コンケン大学付属中学はタイ東北部では有数の進学校だけあって自習室がいくつもあり、授業が終わってからも自習室で勉強する生徒が多い。
その自習室でモッドに日本語を教えることになった。
「アットはどうして日本語が上手なの?」
「どうやって日本語を勉強したの?」
「アットは将来何になりたいの?」
日本語をモットに教えるということで自習室に来たが、さっきからモットからアットの事に関する質問ばかりだった。
可愛い女子高生が自分の事に興味があり質問責めにされるのは少し恥ずかしい。
俺の答えに目を輝かせながら聞き入っているモッドはとてもかわいいなぁ。
「モットはどうしてそんなに可愛いの?」
「・・・・可愛くないよ!色黒だし!」
「いや 天女のようにかわいいと思う。
色黒といっても日本では色黒の方がモテるらしいよ!
だからわざわざ日焼けサロンの日焼け専用機械に入って体を焼いて黒くするらしいから。
モッドは日本人受けする顔だよ!日本に行ったら絶対にモテる。」
「えー日本人にモテるの? ・・・でも日本人の彼氏よりも日本語が出来るタイ人の方が良いなー(チラッ)」
お!なんかこの子グイグイ来るな!
商売熱心なキャバクラ嬢か!
「僕もモットは美人さんで、その肌は健康的で魅力的だと思う。」
照れてさらに可愛くなったモットに1時間ほど日本語を教えてあげた。
これからも定期的に日本語を教えてほしいと願うモットに
「ホームケム(ほっぺたにキス)してくれたら週に2回日本語を教えてあげるけどなー」
とジャブのつもりで要求してみると・・・
一瞬でモッドの可愛らしい顔が近づきホームケムされた。
「約束ね!」
あっけなかった。
周囲に人がいる自習室で大胆にホームケムしてもらった俺はモッドと付き合っていると周囲に認識されるようになった。
というか公衆の面前でホームケムするような男女は進学校では不良扱いされる。
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タイでの成績評価にはアメリカに習いGPA(Grade Point Average)を採用している。
各単位毎の終了時の成績で5段階に評価し、評価の高い順に4点、3点、2点、1点、0点と換算される。
100点満点で90点以上は4点、80点以上90未満は3点、70点以上80未満は2点、60点以上70未満は1点、そして60点未満は0点(単位落とし)
そして全科目の評価点の平均値がGPAポイントと呼ばれ 4点満点中何点を取得したかで評価される。
全科目をギリギリの及第点の60点を取ればGPAは1.0
GPA3.0を取るには全教科80点以上が必要である。
ここで成績評価の解説をするのは、コンケン大学付属中学では後期課程3年間のGPAが3.0以上でなければコンケン大学に推薦入学出来ないから。
そのためアットはGPA3.0以上を目標に日々勉強しなければならない。
つまり女の子にばかり現を抜かしてはいられないということ。
コンケンの田舎の学校とは言え、さすがは東北地方で一番の自習室では毎日多くの生徒が勉強に励んでいる。
自習室でモッドとイチャイチャするのは控えようとアットは思った。