腹上死したら生まれ変わってタイ人に 9話
生産機械メーカーのタイ法人に勤務するユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。
死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。
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第9話 アットの将来
タイ人中学生【アット】に生まれ変わって新しい人生をスタートした【ユウイチ】だったが、このままロイエットの田舎で農業や単純労働をして過ごすつもりは無い。
学歴社会であるタイで成功し、地位と金を得るには有名国立大学には絶対行かなければならない。
学歴社会のタイでは教育を受けたレベルで職場での階級が完全に分けられる。
工場などの技術系の職業に就く場合は中学卒や一般高校卒だと何年働いても単純労働者のまま。
工業高校や技術系短大を卒業した場合は技能労働者(スーパーバイザー)として機械操作や労働者のリーダーとして現場監督者として一生過ごす。
大学の工学部を卒業すればエンジニアと呼ばれ、頭脳労働者として生産管理に携わり実力や人望があれば会社の役員へ出世することも可能となる。
タイではどれだけ優秀でも高卒でエンジニアとして会社で認められることは稀で、高卒者は夜間や週末に大学に通って学士の学位を得なければエンジニアとして会社に認められることは無い。
さらに同じ大学卒業者でもレベルの低い国立大学や私立大学卒業では大手企業に就職するのが難しい。
タイで成功するために出来ればトップのチュラロンコン大学に入学したい。
チュラロンコン大学は無理でも少なくともタイのトップ10(1990年当時)の国立大学に入らなければならない。
1.チュラロンコン大学
2.マヒドン大学
3.タマサート大学
4.カセサート大学
5.シーナカリン大学
6.チェンマイ大学
7.コンケン大学
8.プリンスオブソンクラー大学
9.キングモンクット大学
10.ナレスワン大学
「成績の良いアッタポンでもチュラロンコン大学に入るのは無理でしょう。」
理由は教師のレベルと大学入試試験に対する情報量(過去問題や出題傾向)である。
日本のように入試試験の過去問題が出版されていないタイでは田舎の高校生が出題傾向すら知るすべは無い。対して過去問題だけでなくコネや金の力で入学試験を事前入手すら出来るバンコクの有名進学校の学生と競うということは、クリアが不可能な無理ゲーと同じである。
このままロイエットの中学校の高等部に通わずにバンコクの進学校に編入すればチュラロンコン大学に入学する可能性もあるが、バンコクの進学校の編入試験の倍率は大学入試以上に厳しいだけでなく賄賂やコネ入学が横行している。
「4年制の総合大学に入りたいならコンケン大学なら可能性はあります。
そのコンケン大学に入りたいならコンケン大学付属中学の高等部に編入することを勧めます。」
絶望するアットに先生が提案してくれたコンケン大学は日本で言う「旧帝大」クラスの有名国立大学であった。
そのコンケン大学に入るにもこのままロイエットの中学にいては難しいらしい。
そのコンケン大学に入るにもこのままロイエットの中学にいては難しいらしい。
大学の付属中学では成績優秀者はそのまま推薦で入学できるし、付属中学だけあってコンケン大学の入試試験対策にも定評があるため他の高校出身者に比べて圧倒的に有利らしい。
さらに幸運なことにコンケン大学は政府の地方開発推進の方針により他の大学に比べて多くの予算をつぎ込み、新たな学部の新設や校舎を拡張し定員を大幅に増やし続けているので入学する門戸も広くなっている。
さらに非公式ではあるが入試や奨学金の申請に際して東北部出身者を優先する傾向もあるらしい。
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家に帰ってコンケン大学付属中学への編入について両親に相談してみる。
「何もコンケンに行く必要は無いでしょ? 勉強したいなら(隣県の)マハーサラカムの短大(当時 現在は大学に昇格)で十分でしょ」
「大学を卒業して【学士】の学位が無いと将来良い仕事に就けないよ」
「そんな『将来』のことよりも今払う学費がうちには無いの」
「大学に入ったら奨学金をもらってアルバイトもするので高等部の間だけお願いします」
なかなか了解がもらえない。
タイ人を説得するのに将来の事を言っても難しい。
「大学を卒業して立派なエンジニアになってお金を稼いでお母さんに楽な暮らしをしてほしいんです。」
正座して手を合わせて掌を額につけて『タイ式の最敬礼』を行ってお願いする。
子供が頑張って大学行きたいと言うのを渋る親は本当に馬鹿だと思う。
しかし自分の人生がかかっているのでここは引けない。
エンジニアになれば給料が2万バーツもらえ、10年後には5万バーツ、20年後には10万バーツもらえるから実家に仕送りすると説明し、将来お金を送ることをエサになんとか了承を得る。
母親の了解さえ得れば父親が反対することも無いが、母親と一緒に父親にお願いに行く。
「お父さん!お父さんにお金をたくさん送れるようにコンケン大学に行ってエンジニアになるからコンケンの高校にいかせてほしいです。」
「高校を出てすぐに働いてくれた方が助かるのだが」
「お父さん!高卒で働いて10年たっても1万バーツもらえないけど大卒だと将来10万バーツもらえるんだって!」
母親の援護により無事父親にも了承を得ることが出来た。
こいつらは将来の事よりも目先の1,000バーツが大事な馬鹿だ。しかし給料10万バーツというのが効いたらしい。
こいつらに給料の大半を送るために働くわけではないが、両親の承諾を得たのでこれから編入試験のための勉強に全力を尽くしたい。
俺の人生がかかっている。
オイウェンには編入試験の事は秘密にしておこう。
コンケンに行ったらおっぱいを揉ませてくれる現役女子高生を探せばいいのだ。