帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

コールセンターの⑨ 4話

「タイのコールセンター」
それは日本人でさえあれば年齢・学歴・経験・語学力を問わず誰でも就くことのできる仕事。
経費削減のために日本の労働法を遵守する必要も無く低賃金で雇用できるタイで日本人を低賃金で雇いコールセンター業務を行っている。
そんなタイのコールセンターで働く一人の男性の物語。




第4話 入社説明会と言う名の


ここ数日、俺は何も悪くは無いのに最近職場では怒られ続けているし、ついに社長に退職してほしいと依頼されてしまったので次の仕事を探さなければならない。

先日インターネットで見つけた東京で毎月開催されるというバンコクのコールセンターの入社説明会に参加することにした。


指定された会場は都心のビルにある研修会場のような場所だった。説明会は個別に行われるようで、パーテーションに囲まれた机が3つ設置されている。
会場横の待合室にはすでに10名ほど集まっていた。

受付に名前を告げると応募用紙を渡され待合室で記入し、整理券をもらい自分の順番が来るのをしばらく待つ。


15分ほど待ったところで自分の番号が呼ばれ、パーテーションに囲まれた席に座った。

「面接を担当いたします山田です宜しくお願いいたします。
まずはエントリーシートの内容をさせてもらいます。シパケイさんは大学の国際コミュニケーション学部の国際地域文化学科? これは何を学ばれたのですか?」

「主にアジア地域の文化です。ベトナム留学経験もあります。」

ベトナム語は話せますか?」

「いえ あいさつ程度です。」

タイ語はどうですか?」

「いえ 全く話せません。」

「・・・・・わかりました。 それで現在は特殊車両の製造会社に勤めているそうですが、退職するのはいつ頃を予定していますか?」

「すでに退職が承認されていますので次の仕事が決まれば退社します。」

「わかりました。それでは今回の募集内容を説明します。」


勤務地   タイ国の首都バンコクの中心部
業務内容  商品取り扱い説明、修理受付、クレーム処理など
      のコールセンター業務
勤務形態  7:00-16:00もしくは10:00-19:00の
      実質8時間勤務
      シフト勤務で基本的に週休2日
待遇    契約社員 時給180バーツ(約600円)
      1か月平均9万円程度     


「内容は以上になりますが、質問はありますか?」

「いえ。特にありません。」

「それなら第1週もしくは第3週の月曜日の9:00に現地で出社してください。」

「いきなり出社ですか?」

「はい。事前連絡は不要です。現地でアパート探しもサポートするので荷物を持ったまま出社してください。細かい点などはその冊子をご覧ください。
本日はお疲れ様でした。」


説明会に参加しただけのつもりだったが・・・就職が決まってしまった。社長に報告しよう。



「・・・・・ということでタイのコールセンターに就職が決まりました。」

「そう!タイか。頑張ってください。・・・もしタイで加工部品を安く生産できる会社があったら教えて。あと総務に寄ってきちんと退職手続きしてね。じゃあね。」


あっさりと次の仕事が決まり退職手続きも終わってしまったシパケイはタイに向かう準備を始めた。


※解説
バンコクのコールセンターは退職者が非常に多いので基本的に即採用になる。
面接者は会話が成立しない者、中卒者、異常性が感じられる者のみ弾くように会社から指示されている。