帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

コールセンターの⑨ 3話

「タイのコールセンター」
それは日本人でさえあれば年齢・学歴・経験・語学力を問わず誰でも就くことのできる仕事。
経費削減のために日本の労働法を遵守する必要も無く低賃金で雇用できるタイで日本人を低賃金で雇いコールセンター業務を行っている。
そんなタイのコールセンターで働く一人の男性の物語。


第3話 自己都合退職勧告


工場内でぶつけた車をお客様にそのまま納車した件によってシパケイは営業とは名ばかりの納車担当から外されて工場内で特殊車両の製造現場に異動させられた。

シパケイの仕事はマイクロバスを幼稚園児の送迎用バスに改造する部門で、シートを固定するための金属加工だった。


「おい! お前の開けた穴の径が違ってるぞ!何回注意したらわかるんだ。マーキングの横に9mmと数字が書いてあるだろうが!」


「すみません。やり直します。」


何度も指摘されているのだが、ついついシパケイは同じドリルで穴をあけてしまう。


「お前は馬鹿か? 12mmで開けた穴をどうやって9mmにするんだ? そのプレートは廃棄して違うプレートで作り直すんだよ!お前プレート何枚無駄にしたと思ってるんだ?」


ドリルで金属に穴をあける単純な作業ですらミスを連発するシパケイだったので製造部署に移ってから毎日のように怒鳴られていた。
同僚からも先日の傷つけた車を納車して会社に1000万円以上の損害を与えた件の影響でイヤミを言われるようになった。


「お前のせいでボーナスが下がったじゃんかよ!マジむかつく!」


「お前は土曜日休めていいよなー。戦力外なのがうらやましい。」


シパケイはこの会社に勤めていた10年間は無能だがまじめで無害だったので嫌われることは無かったが、会社に大損害を与えてからは露骨に馬鹿にされるようになった。


そして製造部署に移ってから3か月目にして社長室に呼ばれた。


「シパケイくん。 君は製造部署に向いてないようだね。うちみたいな中小企業では君に働いてもらう部署は無いんだ。

10年以上働いてもらった君をクビにするのは忍びないので自己都合で退職してもらえないだろうか。

次の仕事が見つかるまでは居てもらってかまわない。」


「クビ・・・ですか?」


「あくまで自己都合で辞めてはどうかと言っている。君の英語力を生かす会社もあるだろうし。就職活動で休んでもかまわない。何か協力できることがあれば出来る限り応援する。」


「わかりました。次の仕事を探してみます。」


シパケイは遂にクビを宣告された。労働法で守られた正社員であるシパケイを会社都合でクビにするのは面倒なので社長は避けたい。
法律ではこんな自己都合退職勧告に従う必要は無いのだが、シパケイとしてもそろそろ会社には居づらくなってきたところだ。


ネットで仕事を探してみることにする。
しかし資格が無く、営業事務ぐらいしか経験が無いシパケイにとってこの不景気(2014年当時)では新たな仕事を見つけるのは困難だ。

そんな中、シパケイはある求人広告を見つける。


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