帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

コールセンターの⑨ 13話

「タイのコールセンター」
それは日本人でさえあれば年齢・学歴・経験・語学力を問わず誰でも就くことのできる仕事。
経費削減のために日本の労働法を遵守する必要も無く低賃金で雇用できるタイで日本人を低賃金で雇いコールセンター業務を行っている。
そんなタイのコールセンターで働く一人の男性の物語。
 



第13話 システムエンジニアへの昇格

 


「シパケイさんって何をやってる人なんですか?」
 
 

ビリヤード場で出会う日本人に良く聞かれる。

昨日も僕より少し若い日本人に名刺を渡された
 


彼は商社に勤務していてバンコクに赴任してきたそうだ。
名刺を見ると知らない会社だったが、漢字表記ではあるが自動車メーカーのトヨタと同じ社名で「通商」とついてるので彼は自動販売のセールスマンなのだろう。
 
 

僕も名刺を彼に渡して自己紹介したいが、残念ながら僕に名刺は支給されていない。
わざわざ自分で作る気にもならないので持ってない。
 

定職がある日本人のほとんどは名刺は持っている。

しかし僕は毎日働いているが名刺は無い。
 
 

僕の仕事は何かと聞いてくる日本人に【コールセンター】で働いていると説明すると・・・

「大変ですね。」


と言われてその後はその人からあまり話しかけられなくなる。

 
相手が駐在員でも現地採用の人であっても。


何が大変なのだろう?





バンコクの日本人社会に疎い僕でも最近になってようやく理解した。

バンコクコールセンターのオペレーターしている日本人は蔑まれている。

バンコクにいる日本人の底辺と言っても良いだろう。
無職の沈没日本人にさえも蔑まれている気がする。
毎日きちんと働いているのに。
 
 
 

幾たびかの逡巡の末、職業を聞かれると 「SE」 だと答えるようにしている。



SE システムエンジニア。 



コールセンターのオペレーターではあるが、最近は職場でパソコンの知識が比較的豊富なことを買われてパソコンのメンテナンスも頼まれることがある。

高度なメンテナンスにはタイ人のITサポートの従業員が担当するが、「ネットに接続できない」「パソコンがフリーズした」といったことに対応できる。

だからビリヤード場で出会った人達には職業は【コールセンターのシステムエンジニア】と名乗るようになった。

100%嘘というわけではない。
 
 
 
 

コールセンターの仕事に危機感を感じるようになったのは 周囲の日本人から蔑まれたからだけではない。


これまではハウストーナメントの賞金で生活費が賄えていたが、ナンシーと住むようになってから何かと出費が多く毎月赤字が続いている。


こんな赤字が続くと、年間トーナメントでダブル優勝を果たしても赤字は取り戻せなくなりつつある。

ナンシーを追い出そうか? 

掃除洗濯をしてくれるナンシーとの生活は快適だしそれなりに楽しい。
 
 

ここは収入を増やすために思い切って転職しようか?
 

転職をあっせんする会社に連絡してみようかと考えたが、コールセンターのオペレーターという経歴が足を引っ張るかもしれない。

とりあえずシンガポール人の友人のフィリップに相談してみる。
彼は少々ケチだが頼りになる人だ。