コールセンターの⑨ 16話
「タイのコールセンター」
それは日本人でさえあれば年齢・学歴・経験・語学力を問わず誰でも就くことのできる仕事。
経費削減のために日本の労働法を遵守する必要も無く低賃金で雇用できるタイで日本人を低賃金で雇いコールセンター業務を行っている。
そんなタイのコールセンターで働く一人の男性の物語。
経費削減のために日本の労働法を遵守する必要も無く低賃金で雇用できるタイで日本人を低賃金で雇いコールセンター業務を行っている。
そんなタイのコールセンターで働く一人の男性の物語。
第16話 トンローの天使
事業を続けても何の収入も無いのにフィリップさんに毎月の給料を支払うのも限界が近づいてきたシパケイは、事業をやめることをフィリップさんに打ち明けた。
「あいやー。 もう少しで軌道に乗るかと思ったけど仕方ないねー。
でもねー もう少し頑張ってみるからフィリップさんに30万バーツ貸すねー。
利益が上がったら返すねー。」
フィリップさんなりに頑張っているようだ。出来れば手伝ってあげたい。
正直な話、毎月の生活費の赤字も解決していないので、今後の事を考えると・・・ フィリップさんに10万バーツだけ貸すことにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇
翌月、またもフィリップさんから連絡があった。
「あのねーシパケイ。
あと少しでうまくいきそうなんだねー。
あと10万バーツをフィリップさんに貸すねー。
来月には返せるねー。
これまでシパケイが払ったお金も全部返すねー。」
うーん。
あと10万バーツ貸せばいくらでもこれまでに払ったお金が戻るならと、フィリップさんにさらに10万バーツ貸した。
◇◇◇◇◇◇◇◇
ようやくシパケイはフィリップさんが何をしているかわからないままにお金だけ出し続けている状況が不安になったので、2週間後にフィリップさんに電話をかけたが、電話をとらない。
不安になったシパケイはビリヤード場でフィリップさんを知る人に尋ねてまわったが、行き先がわからないだけでなく苦情ばかりだった。
●フィリップに1000バーツ貸したのに返してくれない
●フィリップからクリスマスパーティーの会費をまだ受け取っていない
●フィリップはここ数か月ゲーム代を支払っていない
●お前はフィリップと仲良しなんだからお前が払え
フィリップさんはシパケイだけでなく他の人たちにも迷惑をかけてた。
シパケイはあきらめきれずにフィリップさんの住んでいたアパートに行くと、すでに引っ越したようだった。
実際は100万バーツ近くをフィリップさんに持っていかれたのだが、シパケイは最後に貸した20万バーツだけが被害額だと思っているのが不幸中の幸いかもしれない。
最後にフィリップさんに貸した20万バーツを取り戻すべく、フィリップさんの写真を知人に配って、主にスクンビットのビリヤード場やプールバーでフィリップさんの行方を捜していたシパケイであった。 しかし
ある日を境に探すのをやめた。それは
天使に出会ったから。
◇◇◇◇◇◇◇◇
トンローにあるプールバーのハウストーナメントの決勝戦。
僕はそこで天使と出会った。
彫りの深い顔立ちに大きな瞳。
細く長い手足に引き締まったウエスト。
しかし不釣り合いなほどに存在感を示す豊かな胸。
ブレイクショットのたびに大きく弾む胸は僕の目を釘付けにする。
彼女のすべてが僕の心を鷲掴みにするが動揺せずに最後まで突き切って優勝をものにした。
ハウストーナメントで優勝したその日、意気投合した僕たちは彼女に誘われてそのまま彼女の車でラヨーンに向かった。