帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

コールセンターの⑨

「タイのコールセンター」
それは日本人でさえあれば年齢・学歴・経験・語学力を問わず誰でも就くことのできる仕事。
経費削減のために日本の労働法を遵守する必要も無く低賃金で雇用できるタイで日本人を低賃金で雇いコールセンター業務を行っている。
そんなタイのコールセンターで働く一人の男性の物語。



第1話 はじめてタイへ



今回の主人公である【シパケイ】は34歳男性独身の関東在住のサラリーマン。

関東の3流私立大学の国際コミュニケーション学部の国際地域文化学科卒。
「大学で何を勉強したんだ?」とよく聞かれるが説明に困る学科だ。

大学卒業後は幼稚園送迎バスや移動検診車などの特殊自動車の改造請負会社で営業職に就いている。



営業職といってもトラックメーカーからの紹介がほとんどで新規営業はほとんどしない。
彼の主な仕事は常連顧客との連絡窓口や、完成した車の納車である。




シパケイには出世したいとか給料を増やしたいという意欲は全く無く、毎日与えられた仕事をただこなすだけで10年以上過ごしている。

仕事に興味が無く結婚する予定もない。将来の目標もないが、シパケイが執着するほど好きなこと。それはビリヤード。




全日本アマチュアポケットビリヤード選手権大会のBクラスでファイナル(決勝)まで進んだ経験の持ち主で、毎晩仕事が終わってから街のビリヤード場の花台で夜遅くまで賭け玉をしている。(ビリヤード場で腕自慢の集まるビリヤード台で賭け)

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威力のあるブレイクショットを維持するために背筋は鍛え続け、左手のブリッジを安定させるために会議中もハンドグリップで握力を鍛えている。




今の彼の不満は、最近は遠方の顧客が増えたため、夜中に車を走らせて西日本や九州に納車することが多く、ビリヤードをする時間が減ったことである。





そんなシパケイに転機が訪れる。
社長がタイ進出のための視察に行く際の同行を命じられたのだ。

大学では国際コミュニケーション学部で学んだため、英語がそこそこ出来る。大学時代には2か月間ではあるがベトナムへの留学経験が買われたようだ。



タイの視察旅行の予定は5日間で社長と部長とシパケイの3名の旅だった。

日本の取引先のトラックメーカーの工場や日本人のいる法律事務所などを社長と一緒に回ったが、社長たちの話の内容には興味が無いのでよく覚えていない。

覚えているのは夜中にホテルから抜け出して行ったプールバーだ。

ちょうどそのプールバーでナインボールのハウストーナメントが行われていた。
トーナメントには参加は出来なかったが、参加費用は200バーツで優勝賞金は2000バーツらしい。レベルはそれほど高くない。

毎日ビリヤードをして過ごせるならタイで暮らすもの悪くないと思った。



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新シリーズ シパケイの話。

この話は実話を元に書いています。