帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

シパトモのタイ起業6

【シパトモのタイ起業】

35歳にしてタイの風俗にはまってしまったシパトモは彼の妻に対してタイに長期滞在する理由を作るべくタイで起業する。
彼にとって必要なのは事業で利益をあげることではなく、ただタイに来る理由だけであった。



第5話 ミューミューバンコク開店


タイで100店舗のフランチャイズ展開を目指してインターネットカフェ「ミューミューバンコク」の記念すべき1号店がBTSラチャテウィー駅前に開店した。
店舗の賃貸契約から内装手配、パソコンの発注などほとんどアルさんとミキさんがやってくれた。とても頼りになる2人だ。

アルさんの収支報告では出資金210万バーツのうち、すでに180万バーツを内装およびパソコンなどで消えてしまい、残金は30万バーツしかない。

なので早期に開店して店の収支をプラス側にしなけばならない。出資元である日本のゲーム開発会社「株式会社デルガ」社長を招いての開店セレモニーは来月だがとりあえずソフトオープンという形で開店することにした。

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開店しても客が来ない。



12時間開店して1日に客が2-3人という日もあった。開店セレモニーまでのソフトオープン期間は2週間だったが、1日の売り上げが1,000バーツを超えることは無かった。
ソフトオープンなので大々的な宣伝はしていないが、駅前の目立つ場所に開店したのに思ったように客が来ない。

なので集客のためお店のパンフレットを作り、近隣のホテルのロビーに置いてもらうよう交渉した。
さらに通行人の目を引くように店の前に目を引くディスプレイ看板や日本のゲームキャラの看板を急遽増やした。

客が来ないことに危機感を感じている私に対して、アルさんとミキさんは集客には興味が無いようだ。内装やパソコンの発注やセレモニーの発注にはとても前向きだし、パンフレットの作成やディスプレイ看板の発注は前向きにしてくれるのに・・・


やはりタイ人ってこんな民族性なのだろうか?
自分の得意分野しかやりたくないのか?
責任感は無いのだろうか?


アルさんに店の売り上げに危機感をもってほしいとお願いすると


シパトモさん。商売は最初が肝心です。ソフトオープンよりも開店セレモニーを盛大に行い、良い運気を取り込んでインターネットカフェ事業を成功させましょう。


アルさんの勧めで15万バーツもかけて、お坊さんを9人招いて店舗も装飾し開店セレモニーを盛大に行った。


ようやく正式オープンしたネットカフェだが、現時点の会社の残資金が10万バーツしかなくなっていた。
日本に戻る前に心配だったのでアルさんに念のために用意した自己資金20万バーツを預ける。


アルさん。開店早々申し訳ないが、親戚の冠婚葬祭が続くので2ヶ月ほどタイに来れません。
このお金を赤字補填としてアルさんに預けますが、出来る限り早く損益分岐点まで売り上げを回復させてください。

シパトモさん。任せてください。毎月月末には収支報告を送ります。


開店直後にアルさんに任せて長期間日本に戻るシパトモにも問題があるが、任せる相手のアルさんに問題があった。


そもそもアルさんにはインターネットカフェ事業で儲ける気持ちは無い。
アルさんとミキさんがシパトモを手伝うのは事業を成功させてその分け前を貰おうという気持ちが無い訳では無いが、手っ取り早く投資の上前をはねて小銭を手に入れようとしている。

これまでの投資金額で内装費用およびパソコン購入費用にはすべて納入業者と結託してアルさんの取り分が含まれるので発注業務には異常に積極的であるが、集客作業には消極的である。手伝うのはパンフレット印刷の発注と集客用デスプレイ看板の発注だけ・・・


お店の好立地(駅前・ホテルのそば)によって売り上げはそこそこ伸びて行くが、1日の売り上げが当初の目標額を超えることはあったのだが、それは開店2年目の2008年のPDA(反政府民市民連合)による空港占拠の影響で外国人のたまり場となった時期だけだった。