帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

海外転生17-タイに行ったら本気出さなくてもやっていける

「海外転生」

それは日本で自らの行いが原因で居場所が無くなった者、能力が無く努力をしないのに自分はどうして評価されないのか現状に不満を持つなどの社会不適合者が新たな新天地として海外に活路を求め新しい人生を歩むこと。

この話はタイでなら俺でも勝ち組になれると信じてやってきた無職で職歴も無い自意識過剰な男の実際の話。(最終回)

 

エピローグ とある面接にて


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履歴書

氏名 シパタケ
生年月日: 1969
年5月27日
最終学歴: ○○農業高校農業科 卒業

職歴
1988  プロボクサーとして○○ジムに所属
1989  B級ライセンス取得
1994  引退
1994  ○○ジムにてひきつづき事務社員兼
プロモーターとなる
1997  招聘したタイ人ボクサーの逃走事件の責任を
とる形で退職
1997  赤い人材紹介会社に人材コンサルタントとして入社
1999
  取引先の○○プレス工業タイランド引き抜かれる形で退職
1999  ○○プレス工業にて事務兼社長秘書として勤務
2002  クーデター等の影響による業績不振でタイ法人
撤退のため失職
2002  ○○タイランド サラブリ工場にて総務マネージャー
として勤務
2007  デモ等の影響によるタイ法人撤退のため失職
2007  ○○印刷タイランド 営業職として勤務
2011  タイの洪水からの復旧が難航し会社に
迷惑をかけないため自ら退職
2011  ○○機械タイランド 営業および総務として勤務
2015  事務所がラヨーンに移転したため退職
2015  ○○電気産業タイランド 総務担当して勤務
2017  2年間の雇用契約が満了し退職
2017  現在求職中
 
特記事項
タイ語、英語ともビジネスレベル
JBC B級ライセンス

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とある面接にて
 
 
へー!シパタケさんてプロボクサーだったんだ!

はい。高校卒業後4年間世界チャンピオンを目指して頑張りましたが、力及ばず途中でムエタイに転向し主にタイで2年ほど転戦していました。

それがきっかけでタイに?

引退後は所属していたジムにタイに2年滞在したおかげでタイ語力とタイのボクシングジムとのコネを買われてプロモーター兼事務スタッフとして働きました。
しかし私が招聘したタイ人ボクサーが試合前に逃げ出したので、興行に穴を開けてしまいました。
誰かが責任をとらなくてはいけない状況になり私がその責任をとる形で退職しました。

その後タイで仕事を探そうと赤い人材紹介会社に登録したところ、その場でタイ語力を買われて正社員になりました。
2年間人材紹介会社で働きましたが、取引先のプレス機械販売会社の社長に気に入られて引き抜かれる形でプレス会社に転職しました。
残念ながらプレス会社はクーデターなどの政変の影響で業績不振のためタイからの撤退を余儀なくされました。

その際に日本で正社員にという話もありましたが、私はタイで生きていくと決めていましたし、ちょうど取引先の携帯電話の液晶画面部品の会社の社長からも誘われていたので、事務所の閉鎖まで見届けた上で転職しました。

その転職した会社も空港閉鎖やらリーマンショックなどで業績不振のため最終的には撤退となりました。
 

へーシパタケさんのタイでの職歴はクーデターやデモなどに翻弄されたのですね。

はい!そうなんです。私は同じ会社で長く働くことを望んでますが、運の悪いことにタイで起こる様々な出来事のたびに転職を余儀なくされています。

それじゃあ○○機械タイランドを辞めた理由は?

○○機械タイランドは主要顧客がラヨーンに多くなったため本社も移転が決定しました。会社からは移転の際に一緒に引っ越すことを強く希望されましたが、私は現在も通っているボクシングジムに愛着があってバンコクを離れるわけにいかなかったので退職しました。

へー!今もボクシングのジムに通ってるんですね。
それにしてもシパタケさん転職回数が多いですね。

タイの政情不安や、やむをえない事情が重なり残念ながら何度も転職しましたが、様々な分野の経験をしています。御社でぜひこの経験とタイ語力を活かせればと思います。

希望給料はいくらですか?

前の会社で8万バーツをいただいていましたが、1年契約社員でしたのでその分給料は多かったです。今回は正社員として長く働ける環境を希望していますので正社員として雇って頂けるなら6万バーツを希望します。

うーん。シパタケさんは転職が多い人だから心配だなあ。
とりあえず試用期間として3ヶ月間5万バーツとして、試用期間終了後に6万バーツにしましょう。
働きによってはもっと上げてもいいですよ。でも最初は5万バーツではいかがでしょう?

すみませんが最初から6万バーツ頂けないでしょうか?8万バーツから5万バーツに下がっては生活に影響が大きすぎます。

普通に能力を発揮してくれたら間違いなく6万バーツにするから。
場合によっては2か月目から6万バーツにする前提で、とりあえず5万バーツでお願いします。

これまでの経験で試用期間が過ぎても約束が守られず給料が変わらないことがありました。
気持ちよく働くために最初から6万バーツでお願いしたいのです。

シパタケさんはタイでの経験が豊富なので普通に働いてくれれば6万バーツ以上にしますよ!

少し考えさせてください。

 


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シパタケは50歳近くなった現在も給料5万バーツでバンコク近辺の会社を転々としている。

タイの職歴も履歴書には6社しか無いが、実際には3ヶ月でクビになった会社がその数倍ある。


これまでシパタケは入社後の試用期間の3ヶ月の間は安い給料設定でその後試用期間終了後に当初合意した給料にするといわれて入社して、試用期間後に給料が上がったことは無い。
 
シパタケは最初の昇給の約束は破られるものだと思っている。
だから入社時の給料交渉は必ず食い下がる。

試用期間後に給料が上がらない理由が【自分にある】ということには20年たっても気づかない。

努力もしないで責任転嫁ばかりしているシパタケがこれまでなんとかやっていけたのはタイだから。
 
シパタケは新規営業のような数字で能力や成績が出やすい職種では高すぎる自己評価と実際の営業成績とのギャップが埋まらずに会社に責任転嫁してすぐに辞めてしまうが、同じ営業でも既存顧客のフォローといった分野や、成果の出にくい総務部署では2年以上勤まることがあった。

狭い日系社会では「使えない日本人」という噂は広がってはいるが、タイに新規進出してきた会社を渡り歩くことでこれまで食うことに困らず生きてきた。

20年たってもテーメーやソイカに通っている。
先日見かけたが、彼に声をかけるゴーゴー嬢はいなかった。
 

俺はシパタケ以外に素行がひどく、職を転々とするたびにクビになり、クビになるたびにクビにした会社を労働裁判所に訴える日本人を2人知っている。

その日本人に比べたら「
能力が無く努力もしないが高い自尊心が高く、すぐに居心地が悪くなり、自ら退職するシパタケ」はまだマシなのかもしれない。
 
 
この話を書くにあたってパタケを馬鹿にしている俺であるが、俺の転職回数もそろそろ普通ではなくなっている。
 
本社本社から派遣されて来たエリート達から見ればどうしようもない馬鹿現地採用日本人だと思われていたであろう。
 
幸い俺は日本で雇ってくれる会社がある。もし今の会社を辞めたくなったらシパタケのことを思い出して自分を戒めるようにしよう。
 

ー完ー
 
 
おわりに

自分視点でダメ人間の描写に苦労しましたが伝わったかどうか心配でしたがいかがでしょうか?
またシパタケは実在の人物で本人がこのブログを見つけないことを祈ります。
 


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