海外転生15-タイに行ったら本気出さなくてもやっていける
「海外転生」
それは日本で自らの行いが原因で居場所が無くなった者、能力が無く努力をしないのに自分はどうして評価されないのか現状に不満を持つなどの社会不適合者が新たな新天地として海外に活路を求め新しい人生を歩むこと。
この話はタイでなら俺でも勝ち組になれると信じてやってきた無職で職歴も無い自意識過剰な男の実話。
「会社全体を支えるポジションって言うか 総務って結構重要なポジションなんですよ。会社を陰で支える仕事って向いているんじゃないですかね。自分に」(シパタケ)
第14話 役に立たない人材紹介会社
バンコクの北約100km。アユタヤよりさらに北にサラブリ県がある。
そのサラブリには日本の工場が多く入居しているサラブリ工業団地があり、ある日本から進出したばかりの工場の総務担当マネージャーのポジションを人材紹介会社に斡旋された。
バンコクの戦勝記念塔のバス乗り場から乗り合いのバンに乗って1時間半。
さらにバンを降りてからトラックの荷台を座席に改造したソンテウに乗り継いで15分。
やっとのことでサラブリ工業団地に到着した。
都会派の俺としてはこんな僻地で働くのは嫌だが、バンコクからの送迎車付き(数人で乗り合い)で給料6万バーツという条件に惹かれて今日の面接に臨む。
面接は出来たばかりの工場で本社役員のじいさんと、工場長のさえないおじさんとで行われた。
この工場は携帯電話の液晶画面の部品を作る工場。
この工場は携帯電話の液晶画面の部品を作る工場。
まだ稼働しておらず、今は生産機械の設置をしている最中だった。
今回の募集は「総務マネージャー」。
俺が望まれる主な職務は
★採用したばかりのタイ人スタッフの管理
★タイ人スタッフの研修(中国工場派遣)
★ISO(国際標準化機構)認証の取得
★ISO(国際標準化機構)認証の取得
3点である。
シパタケはISOと言う言葉は知っている。
赤い人材紹介会社在籍中に「ISOの運用専門のタイ人スタッフ」の面接・選別・紹介した経験もある。しかしISOとは何なのかは分からないし、実務についても知識は皆無。
ISOの経験があるタイ人スタッフに命令ぐらいは出来そうな気がする。
プレス機の会社みたいに外に営業に出なくて済むのが何より魅力的だ。
プレス機の会社みたいに外に営業に出なくて済むのが何より魅力的だ。
面接での俺はタイ語力と英語力、タイでの実務経験をアピールした。
その日の夕方に人材紹介会社の担当者から『採用』連絡があった。
バンコクからサラブリまでの通勤は面倒だが、給料を6万バーツもらえるということで仕方なく働いてやることにした。
タイで働き始めて3年。
給料は3万バーツ→5万バーツ→6万バーツと順調に増えている。
俺のジョブホッピングは順風満帆だな。
この工場でキャリアを積んで次の転職先では給料8万バーツは行けると思う。
サラブリ工場の総務マネージャー就任後、工場長から特に指示されたのが「ISO認証」の早期取得。
「ISO認証取得」と言われても何から手を付けて良いか全く分からない。
誰に質問して良いか見当がつかないので俺をこの会社に紹介した人材紹介会社の日本人に聞いてみた。
シパタケさん。うちは仕事の紹介の延長として雇用条件や契約に関する問題については助言や、お手伝いしています。
しかし純粋な仕事上の問題はシパタケさんご自身で解決していただけますか?
薄情なヤツだ。この人材紹介会社のWebサイトには求職者のトータルサポートをすると書いているのに、ヤツらは仕事を紹介しっぱなしで何も助けてくれない。
Webサイトで過大広告しているわりには求職者に冷たい扱いをする会社だと訴えたい。
早速タイちゃんねるの掲示板にこの会社と担当者の悪口を実名で書いておく。
俺の知り合いでこういったことに詳しいのはノドオだけ。
これまで数々の遺恨があるノドオに悔しいが電話で助言を求めてみる。
シパタケさん。お話を聞く限り、あなたはISOのことをまず知らないといけません。
「ISOとは」というキーワードで、ググってWebサイトからある程度ISOについて情報を得て内容を理解してください。
セントラルワールドの紀伊国屋書店に行けばISOに関する書類があるので買って読んでみてください。
ノドオはいつもこうだ。俺を助けることはしないで偉そうに指示しかしない。
悔しいがノドオの指示の通りにISOについてネット調べたが全く理解できない。恐らく本を買ってもよくわからないだろう。
そもそもISO取得サポート会社に依頼するなら何故俺がISOについて理解する必要があるのだ?
ノドオの助言は無視してISOについて何も分からないまま、早速ISO取得サポートコンサルタント会社にアポを取って相談に行った。
私たちISOコンサルタントはお客様をサポートするだけで、実際の運用は各事業所にて行っていただくものです。
ISO認証を得るにはまず自社でルールを決めて、きちんとルール通りに仕事を進め記録を残すことをずっと継続することです。
まずは御社の事業内容に沿って品質を向上させそれを維持するルールを決めないといけません。そのルールは「ISO標準書」にまとめるのですが、一般的なタイの製造業向け標準書の雛形をお売りしますので、この内容を自社の状況に合わせて修正してください。
英語と日本語とタイ語で書かれた数百ページにも及ぶ書類のデータをプリントアウトしてみたが、数ページ見たところで断念した。
全く理解出来ない。
俺にはどうしようもないのでノドオに頼むことにした。
ノドオさん。「ISO標準書」のデータを送るので、うちの工場の業務にあわせて修正してもらえますか?費用は当然払います。
は?シパタケさん。私はあなたの会社が何を製造しているか分からないのに修正など出来ませんよ。
うちの工場は携帯電話の液晶画面部品を作っています。
そういう事じゃなくて生産の手順や材料管理方法、完成品の管理方法を知らないと出来ません。
だったら一度うちの工場にお越しください。
一度行ったぐらいで出来るものじゃありませんよ!
だったら何度でも来てください。
シパタケさん。私は自分の会社経営ですら間に合ってないのに専門外のISO取得業務は物理的に無理です。
話を聞いた限りでは、あなたはISO取得の為に雇われたようなものですよね。
その役割を外部の者に丸投げするのはどうかと思うのですが。
おい!せっかく俺が金を払っても良いと言ってるのに協力しないとは、お前には二度と頼まないぞ!今度あったら覚えておけ!
ガチャ!
クソ!ノドオの馬鹿は理屈ばかりこねて何もしようとしない。
ISOについてはタイ人スタッフにタイ語版の標準書を渡して丸投げして俺はタイ人スタッフの採用に専念しよう。