帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

コールセンターの⑨ 17話

「タイのコールセンター」
それは日本人でさえあれば年齢・学歴・経験・語学力を問わず誰でも就くことのできる仕事。
経費削減のために日本の労働法を遵守する必要も無く低賃金で雇用できるタイで日本人を低賃金で雇いコールセンター業務を行っている。
そんなタイのコールセンターで働く一人の男性の物語。




第17話 娘の誕生



シパケイはトンローのプールバーで出会った天使と一緒にラヨーンのビーチリゾートに行った。


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ワタシはずっとシパケイの帰りを待っていた。

毎夜遅くまでビリヤード場にいるシパケイだが、どんなに遅くても明け方には帰って来る。

それが翌日の昼を過ぎても帰ってこない。

こんなことは初めてなので心配だ。

何度も何度も彼に電話したが、全く電話をとらない。

そのうち電源を切ってしまった。



シパケイに何かあったのだろうか。事故に巻き込まれていないだろうか。

来月に生まれてくる子供が父親の無い子供になってしまう。



心配で眠れない。

ひとりで待っていると心細くなって・・・急にお腹が痛くなった。


痛い。 

死ぬほど痛い。 

痛くて動けないが、お腹の子供が心配だ。


病院に行かなければお腹の子供が死んでしまうかもしれない。
 
なんとか1階までたどり着いて、警備員にタクシーを呼んでもらい病院に向かった。


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トンローのプールバーで出会った天使の名前は「ソムオー」。 
夏みかんという意味らしい。

細い体に不釣り合いなほど大きな胸は、確かに夏みかんのようだった。


ハウストーナメントが終わってそのまま彼女の車でラヨーンのビーチに行き、リゾートホテルにその日は泊まった。

予期せぬ週末をソムオーと共に過ごし、夏みかんのようにたわわに実った胸の感触の余韻に浸りながら自宅に戻るとナンシーは居なかった。


バッテリーが切れた携帯電話の充電をすると、ナンシーからの着信履歴が100件も表示された。


あのメスゴリラは2日外泊したぐらいで100回も電話をかけてくるとは・・・


無視しようと思ったが・・・それでも妊婦なので少し心配になり、ナンシーに電話をかけた。


受話器の向こうのナンシーは泣き叫んで何を言っているのかよくわからない。

お腹が痛くてサトーンの病院に入院していることはわかった。


入院していることを僕に伝えたかったようだ。


今日は疲れているので携帯電話の電源を切って寝た。


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翌日仕事が終わってからナンシーの入院している病院に行くと・・・子供が産まれていた。

女の子だった。

子供が生まれるなら事前に言えよ!このメスゴリラ!



僕がソムオーとラヨーンのリゾートホテルに行っている間に予定日より1か月早く生まれたらしい。

落ち着いて考えてみると、自分の子供が産まれるときに無断外泊したのは・・・ちょっと悪と思ったのでナンシーに謝った。


子供の名前は 梨央(りお)と名付けた。

特に深く考えていない。


ナンシーにどんな意味かと聞かれたが・・・ 梨(なし)の央(まんなか)・・・結局答えられなかった。