帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

バンコクの陽炎22編 第10話 帰国 (最終回)

寺澤くん。君の嗜好をとやかく言うつもりは無いが、たびたび妙な子連れの女性が会社にまで来て騒ぎ立てると、君を庇いきれなくなるぞ。

会議の後で部長に呼ばれて怒られた。
(次は本社に報告するということか・・・・)





バンコクの陽炎22編 第10話 帰国 (最終回)





かゆい。

最近からだのあちこちが痒い。
特に顔がひどく、顔全体に赤いブツブツが広がっている。
昨日病院に行って診てもらったが原因不明だそうだ。


プローイの件も併せてますます会社に行き辛い。
売春婦が会社に来るし、原因不明の赤いブツブツが顔中にあると性病を患っているとしか見られないだろう。

タイ人従業員・日本人駐在員ともに寺澤に話しかけるスタッフは最近ほとんどいなくなったし、会議のときに出されるコーヒーカップは僕の分だけ、なぜか目印が付くようになった。

昼休みも食事を誘ってくれる相手がおらず、机でパンをかじっている。
寺澤が通りすぎるとみんなヒソヒソ話をする。完全にHIV感染者のような扱いだ。


HIVの検査は病院に行って最初にやった。結果は感染していない。
頭に来るので、背中に診断結果の写しを貼っておこうか?


・・・

寺澤君。その外見じゃあ業務に差し障るから日本でゆっくり治療して治ってからまたこっちで活躍してくれ。

・・・

・・・

・・・


あわただしく帰国した寺澤は、日本で金融機関のサポートシステムを手がける部署に配置された。
毎日街角のATMをまわってメンテナンスしている。

幸い顔のブツブツは感染症ではなく、ストレスが原因だそうで、日本で治療を始めてから少しづつ良くなってきている。


ATMのメンテナンスをしながら寺澤は肉割れしたお腹が急に恋しくなった。

プローイは元気にしているだろうか・・・。



バンコクの陽炎22編 (完)