帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

不動戦士タカハシ 最終話

最終話 子供を愛してないの!!



タカハシがハッピー商事に入社して半年が経過した。
半年間ずっと日本人からの苦情処理のみ担当している。

押しの弱いタカハシが新規物件の案内をしても入居が決まらないので山川からは苦情処理しか出来ないヤツとして扱われていた。

最初の頃は【お客様が間違って】100ボルト用のドライヤーをタイの200ボルト用コンセントに指して燃やしてしまったものを【自腹で】弁償していた。

しかし現地採用の4万バーツの給料から日本の給料だけでなく現地手当ももらっている駐在員のお客様に新しいドライヤーを買って差し上げるのも経済的に限界だった。

なのでタカハシは新しいスキル【ひたすら謝る】とこれはどうしようもないですよと【哀れを誘う】を取得したことで自腹を回避するようになっていた。


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「タカハシ! ベビー服を買うから1万バーツ出して!」


子供が産まれてからミンちゃんはタカハシのことを以前の「ダーリン」から「タカハシ」と呼ぶようになった。

タカハシには「ナオヤ」という名前もあるのだが、何故かミンちゃんは「タカハシ」と呼び捨てで呼ぶようになった。


お金が無いと、出し渋るタカハシに対しては


「子供を愛してないの!!」


子供の出産の過程で10kg増量したからなのか、「私を愛してないの!!」とは言わなくなったミンちゃん。


「タカハシ! 今晩友達と飲みに行くから子供の面倒を見てね!  え? 子供を愛してないの!!!」


ミンちゃんとの子供を心から愛しているタカハシは「子供を愛してないの!!」と言われると何でも言われるとおりにしてしまう。


周囲からの理不尽と戦わない男「タカハシ」


タカハシは子供を寝かしつけてからミンちゃんの帰りを待っていたが夜中の2時を過ぎても帰ってこない。
心配なので電話をかけようかと思うのだが以前に宴会の最中に電話をかけた時には「うっとうしい!!!」と怒鳴られたので躊躇してしまう。
 
 
結局朝になっても帰ってこないミンちゃん。
会社に出勤しようにも子供を置いて出かけられない。
 
 
 
 
この無断欠勤がタカハシがハッピー商事を解雇されてしまう大きな原因となった。
 
 
 
解雇されたことをミンちゃんに話したところタカハシがミンちゃんに言われたのは・・・

仕事辞めたのなら毎日子供の面倒見れるってことね。
友達の実家に遊びに行ってくるからちゃんと子供のお世話してよ!
 
 
それから2万バーツちょうだい!
 
 
あの~仕事を探さないと・・・・
 
 
子供を愛してないの!!!
 
 
 
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あとがき
 
このあとタカハシはタニヤのカラオケ店で働いたり、知り合いの日本人から寸借詐欺をしながら食いつないだあと違法な関係の仕事をしているらしい。
 
 
ミンちゃんは典型的な昔の田舎タイ人なので純粋に自分の欲求をぶつけているだけだと思う。
それをタカハシが拒否したり怒ったりしない限りは際限なく素直に欲求をぶつけるだけ。
 
タイに海外赴任して自分が偉くなったと勘違いして理不尽なことを言う駐在員妻や日本人とつきあえば贅沢が出来ると勘違いしている嫁。
 
そんな人たちを相手に、苦労した気が弱くて自己主張の少ないタカハシだったが最後に見かけたときは・・・かなり色黒になって目つきがわるくなっていた。