腹上死して生まれ変わってタイ人に111話
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第111話 インド人と戦う2
2009年2月。
インドのムンバイ工場に着任してからやる気の無いインド人の胸ぐらを掴んで怒鳴りまくった。
その結果、1か月で半数以上のインド人技術者やマネージャーが辞めてしまった。
「インドの事も知らないくせにやってくれたな」
とインド工場の田坂工場長をはじめ他の日本人達はアットの行動を冷ややかに見ている。
ロクに働かないインド人技術者であっても居なくなれば製造現場が成り立たない。
アットは製造現場で朝から晩までつきっきり。
インド人達を怒鳴ったりなだめたりする日々が続いた。
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グリスまみれになりながらもアットはインド人ワーカー達と一緒に働くが、思うように仕事がはかどらない。
しかし怒鳴られながらも一生懸命にアットの意を汲んで仕事をするインド人スタッフも中にはいた。
プロレスラーのようにゴツい体をしたラジャン。
この2人は一生懸命仕事をしてくれる。
「ボス! インド人は怒鳴ってばかりじゃやる気が無くなって働かないよサー」
確かにタイ人も怒鳴られてばかりだとやる気無くすよな。
「褒めるのは現場で毎回褒めたらいいのか?」
「そうじゃないよサー 社員全員の前で会社の偉い人が褒めるのですよサー」
全社朝礼で褒めるのか?
表彰状でも渡すのか?
表彰状なんてタダだから朝礼で一回やってみるか。
あとは月1回のパーティーか。
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翌週月曜日の全体朝礼の日。
「先週の最優秀社員」として表彰状を工場長から渡してもらった。
今回は実験なので「可もなく不可もない」ヤツを数名人選して実験してみた。
「君は優秀なスタッフです。どうかその実力を発揮して会社に貢献してください。」
パフォーマンスは良くないヤツなので実績は褒めようが無いが良い大学を出ているので能力が「優秀」ということにしてやる。
それ以降、そいつは・・・空回り気味ではあるがやる気は向上したと思う。
ムトゥの言うように全体朝礼で表彰するのは効果はあった。
さらに会社主催で毎月1回、スタッフを選抜して20名ぐらいが参加するパーティーも開く。
そのパーティーでも工場長賞、製造部長賞として表彰状とポケットマネーで金一封を渡す。
パーティーで表彰したからといって製品の不具合は無くならないが、他人事のように「そんなの出来ない」「俺は関係ないから知らない」といった態度をとるスタッフは少なくなった。
表彰効果は・・・まずまずといったところ。
現場では引き続き怒鳴ることもあるが、飴とムチ作戦でやる気だけは引き出せたようなのでしばらく頑張ってみる。
安心して任せることが出来るスタッフが未だに少ない。
自ら現場で朝から晩までグリスまみれになりながら働く日々が続いた。
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「おい! そこのインド人! お前だよ!」
工場で作業していると後ろから呼ぶ声がした。
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