帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

腹上死して生まれ変わってタイ人に109話

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辞令


初級幹部3級 アッタポン シーチャッカーン

中級幹部1級への昇格及び、ムンバイ工場 製造部長を命ずる。


2008年12月


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第109話 インド転勤



2008年12月。
ようやく家の建設が完成した頃を見計らっての転勤辞令。
悪意としか思えない。

いや薄々気づいてました。


インド工場を新規に立ち上げたのは2008年の4月。
生産ラインの立ち上げがまったくうまくいかず、現地で受注した機械の生産がうまく出来ていなかった。

そのため何件かインドの案件を急遽タイ工場で代わりに製作し、インドに輸出した。

タイからの輸出となれば、インドへの輸入関税や輸送費が余計にかかり赤字となる。
本社でも問題視されインドのテコ入れに誰が行くか話題になっていた。



そんな中、村上本部長が「アジア統括本部の問題は管轄内で対処する」と言った時点で嫌な予感はしていた。



季節外れの中級幹部1級への昇格は・・・餞別だと思う。

普通は30代で昇格しないから片道切符かもしれないな。





ムンバイ工場の工場長の田坂さんは俺が良く知る人だ。
この前までタイ工場の計装グループリーダー。
前世ではタイで直属の上司だった人。

この人は上品で無害な普通の人だ。
こんな人をインドに行かせるのは酷なのだが、計装グループ出身で工場長になる機会が少ないので喜び勇んで赴任していった。


そんな田坂さんはインドで相当苦労しているらしい。


ちなみに田坂さんの跡を継いで計装グループリーダーになったのは【ユウイチ】。
これは前世と全く同じ流れである。


計装グループリーダーになってから【ユウイチ】は俺にいろいろと反抗的な態度をとってきているが、仕事もプライベートも忙しすぎてほとんど相手をしていなかった。


しかし俺が日本に研修に行ったのは【ユウイチ】のタイ赴任と同時。
インドへの転勤も【ユウイチ】の計装グループリーダーへの昇進という何か因果関係を感じてしまう。



見えない力に追い出されるようにアットは「未知の国インド」へと転勤していく。
ひとりで。

ナムワーンと犬と新居を残して。



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