帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

腹上死して生まれ変わってタイ人に46話

生産機械メーカーのタイ法人に勤務するユウイチは泥酔しながらも若いゴーゴー嬢をホテルに連れ込み行為の最中に突然死してしまう。

死んだはずのユウイチは目覚めたとき、タイ人中学生の【アット】になっていた。

第1話はこちらから
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第46話 コーンゲェン大学生日記6 



「就職活動なんて大学を卒業してからするものでしょ?私たちまだ大学生だよ。」


僕と同じアパートのルームメイトでコーンゲェン大学日本語学科に通う友人に僕が就職活動を始めようと誘った事に対してのコメントである。


タイの大学4年生は日本のように在学中に企業に就職が内定することはほとんど無い。
そもそも4月1日に入社式をする会社などタイには無く、大学4年目のカリキュラムを終えた学生は、4月末までを春休みのようにのんびりと過ごしてから翌年度が始まってから各々のタイミングで就職活動を開始する。

卒業してすぐに働かなければならないという気も無い。
さすが運転免許証の有効期限が切れてからでないと更新を受け付けない国である。



さらにタイの大学はあくまで教育期間という認識であって、学生の就職の世話などしない。
タイの学生は卒業後に自力で求人広告を見て就職先を探すのだ。



タイの大企業は新卒の学生を採用して1から教育することにあまり積極的ではなく、他社である程度教育された即戦力を好む傾向にあった。

だから新入社員が一斉に入社する文化は無く、新卒社員を雇う会社でも入社するタイミングはそれぞれ異なる。


ただしヂュラーロンゴーン大学など優秀な大学では優秀な卒業生を確保しようとする企業が集まり、毎年大学構内で就職説明ブースを設置して優秀な生徒の勧誘に努めている。


そのヂュラーロンゴーン大学で行われる合同就職説明会に一緒に参加しようと友人を誘ったのだ。




当時のタイでは合同就職説明会はヂュラーロンゴーン大学ぐらいでしか行われておらず、この説明会には在学生以外にも卒業生や他の大学の卒業生も多く参加している。

100社以上の企業が参加する合同就職説明会に参加しない手は無いと、僕の指導のもと友人に英文履歴書を書かせて強引に友人を連れてバンコクに向かった。



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チュラロンコン いや国立ヂュラーロンゴーン大学敷地内で行われる合同就職説明会当日。
タイの有名企業や日系企業合わせて100社以上がブースを出していた。

会場にはヂュラーロンゴーン大学の在学生と思われる制服姿の学生が多いがスーツ姿の参加者も多く見られた。


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僕は同行した友人と会場内を一巡りした時に懐かしいロゴを目にした。
僕が前世で勤務していた機械製造会社のブースを発見した。


ブースには女性社員が2名がヒマそうに座っていた。


そういえば機械工学科を専攻したのも、元の会社に入って現地法人のトップになってやろうと思ったからだ。
今は元の会社に何も思い入れは無いが、勝手知ったる元の会社に入社すれば色々と有利に違いない。



「すみません。コンケン大学の学生ですが御社に応募できるでしょうか?」


ブースに居た女性に用意していた英文履歴書を渡した。
すこし頭の悪そうなふたりは「ふーんチュラロンコン大学の学生じゃないんだぁー」と言いそうな雰囲気だった。

携帯電話の無い時代である。電子メールも普及率が少なく、今のアパートには固定電話が無い。

今のように履歴書を見て後で連絡は手紙しか無いので、ここで引き下がると就職の機会を失ってしまいかねない。

頭の悪そうな受付に、俺の能力をその場で頑張ってアピールしなければ次は無い。


俺は機械工学科の専攻で日本に留学経験があって日本語検定1級だとアピールすると、午後から日本人が参加するから13:30頃にここに来たら紹介してやると言われた。



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友人とふたりで他のブースを回ってから大学構内で食事し、カフェで暇をつぶしてから言われた通りに機械製造会社のブースに行くと若い日本人男性がいた。

タイ人女性受付に再度来たと告げると日本人男性に取り次がれ面接することになった。

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-Can you speak English?

*Yes, off cause!


タイ人女性には日本語能力をアピールしたはずだが、そんなことは日本人には引き継がない。


-Did you graduate from .... Khon Kaen Univercity. ふむふむ
えーっと Beppu...Aoyama? 別府青山

はい。交換留学生で大分県別府青山高校に10か月間留学しておりました。

-It means, You have been to Japanese......え?今普通に日本語を話してなかった?

はい。日本語検定1級を持っていますので普通に日本語で話していただいても理解できます。

君は・・・タイ人だよね?

はい。タイの東北部のロイエット出身で両親共にタイ人です。
出身地のロイエットには日本人で青年海外協力隊ユウイチさんという方に非常に良くしていただき、日本語も彼から習いました。

高校でも日本語の授業があり、すでに9年以上日本語を学びました。

コンケン大学で機械工学科を専攻しましたので、御社のような技術力が高い会社で一人前の技術者になりたいと応募した次第です。

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普通に日本語をしゃべったので驚かれたが、明後日にラマ9通りのタイ法人本社事務所での面接が決定した。

友人は日系の靴下製造工場と日系鋼材商社と二社での面接が決定した。


バンコクでの面接が終わるまでの数日間、友人と二人でバンコクに滞在することになった。


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