帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

バンコクの陽炎22編 第7話 タイの長距離バスの車窓から

寺澤はナコンサワンに向かう長距離バスの車窓から流れる景色を眺めていた。
隣ではプローイが、大きないびきをかきながら爆睡している。

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第7話 タイの長距離バスの車窓から



スカイの店で鐘を鳴らした翌日、寺澤はモチットにあるバンコク北バスターミナルからタイ中北部のナコンサワンに向かう長距離バスに揺られている。

「ナコンサワン」ナコンとはタイ語で都や都市、サワンは天国なので「天国の都」という意味だ。
地域区分ではチェンマイと同じく北部に位置するナコンサワンだがバンコクからは意外と近く、バスで3時間半だそうだ。

バスに揺られながら、寺澤はどうして自分はナコンサワンに向かってるのか自問自答している。


バンコクに流れるチャオプラヤ川の最上流に位置し、ピーン川とナーン川が合流するナコンサワンは川魚の名所らしい。
昨日の晩にプローイはしきりにナコンサワンの魚がおいしいからいっしょに食べに行こうと誘うので土日を利用してプローイの帰郷に同行したのだ。
加藤にはナコンサワンに川魚を食べに行ったと言っておこう。

バンコク北バスターミナルを出発してから3時間ほどたち、周囲にのどかな田園風景しか無い路上でバスは突然止った。
車掌が大声でクロークプラ!と客席に向かって言った。

ピーケイ 降りるよ!

さっきまで爆睡していたはずのプローイは寺澤の手をつかんで急いで降車した。

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この辺りにおいしい魚のレストランでもあるのだろうか?
さっきから途切れ途切れにチャオプラヤ川が見えていたが、ここからは川は見えない。
戸惑う寺澤をよそにプローイはわき道に向かって歩いていった。

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二人はわき道にとまっていたソンテウに乗り込み、舗装されていない道を砂埃を上げなが10分ほど走ると目的地に着いたらしい。

そこは藁葺きの高床式住居で、いかにも「タイの田舎の農家」という家だ。
家の周りにはタイの田舎らしく、数人の子供が走り回っており、ハンモックに寝転がっていたり、屋外台所で料理を作っている大人も数人いた。

まさか・・・ここは

プローイの実家であった。

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