帰国したタイの変な日本人

バービアを愛した中年デブの元タイ沈没者がタイを想ってタイを舞台にした小説のようなものを書いてます。

バンコクの陽炎22編 第6話 プローイとの邂逅

タイのバービアにはどこの店にも鐘がぶら下がっている。
この鐘を鳴らすということは店にいる従業員と客全員に1杯づつドリンクをおごる意思表示である。
この鐘を鳴らす行為をジングルベル(ring a bell)という。

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第6話 プローイとの邂逅


スカイ。もう1回勝負しよう。君が勝ったらテキーラ5杯だ!

ロイエット出身のスカイ(20歳)に5回連続で四目並べに負けた寺澤はもう勝つことにこだわらなかった。
急にレートが5倍の5杯勝負に切り替えた理由はこうだ。

★寺澤が勝てば望みどおりパンツを手に入れられる。

★スカイが勝てばテキーラをさらに5杯飲み、酔っ払って判断力が低下したところを強引に購入する

寺澤ならではのクレバー且つダーティーな作戦だ。



テキーラショット5杯は家に帰れなくなるからダメ! 
代わりに私が勝ったらテキーラのオレンジ割り5杯ね!

ダメだ!

だったら私が勝ったらジングルベル!(ring a bell)

ダメだ!


バービアで鐘を鳴らすのはバカのすることだ。酔った勢いで鐘を鳴らすことで店の従業員だけでなく、他の客のドリンク代まで出すというありえない頭の悪い行為だ。

この店はママさんとキャッシャー兼バーテンを含めて従業員は7人。
加藤以外に客は2人の計11人。

7人の従業員はレディースドリンクといって本人へのコミッションが含まれるため、定価プラス60バーツなので1杯約200-250バーツ。加藤と寺澤を含めた客4人は150-200バーツと、鐘を鳴らすだけで2000バーツ以上の出費となる。

どう考えても割に合わない。鐘を鳴らす代償に何が得られるのだろうか。虚栄心すら満たされるとは思えない。
飲んだ勢いでそういった行為を行う人間は職場環境や私生活があまりにも満たされていない・・・・


カラン カラン カラン カラン カラン カラン


スカイが立ち上がり満面の笑みで鐘を鳴らしている。



何が起こったんだ!
考え事をしながらプレイした四目並べに寺澤が負けた途端にスカイが鐘を鳴らしていた。

店中が大騒ぎだ。
まわりの従業員が近寄って乾杯しに来た。そして口々に「あなたジャイディー」と。

もうこうなっては遅い。取り返しがつかない。あきらめて今日は飲もう。


・・・・

・・・・


加藤の分を合わせて6000バーツを支払った寺澤は失意のままバーを後にした。



ピーケイ!

バーを出る寺澤に駆け寄ったのはプローイだった。
大盤振る舞いをしている寺澤たちに気づいたプローイは寺澤が店から出るのを待っていたのだろう。

明日ナコンサワンに帰るの!だから今日はお店に寄って!

酔った寺澤の腕をプローイは強引に引っ張って店に連れて行った。